「米国では『Work From Anywhere(オフィスにとらわれずあらゆる場所で働く)』が一般的になってきており、フルタイムでもリモートで働く人が増えています。そのような中で、宿泊施設に長期間滞在しながら働くというスタイルも広がった。実際にAirbnbなどの利用者も28日以上の長期予約が増えています」

「ただそこで課題になるのが、仕事環境です。従来の宿泊施設はコロナ前の前提で作られているものが多く、Wi-Fiが遅かったり、デスクが小さかったりする。単に宿泊するだけであれば良くても、そこで仕事をするとなるとペインが大きかったんです」(内藤氏)

例えばサンフランシスコのオフィス空室率は約20〜30%と高い水準。直近ではコロナ前の働き方に戻すような企業も出てきてはいるが「GAFAなどの一部企業ではそのような兆候も見られる反面、スタートアップを中心にリモートを継続する企業も多い」(内藤氏)という。

Anyplaceではこのリモートワーク時代の働き方における課題の解決策として、「リモートワークに最適な環境を実装した物件」を自分たちで提供するという方法を選んだ。

大手の不動産会社と提携して借りたアパート(サブリースモデル)に、高速なWi-Fi、広めのデスク、ワークチェア、モニター、ウェブカメラ、マイクといったリモートワークの必需品を設置。「ユーザーはラップトップさえ持ってくれば快適に仕事ができる」という環境を整えた上で、1カ月以上の長期滞在用物件として提供している。

物件のワークスペースのイメージ
物件のワークスペースのイメージ

主なユーザー層はコンサルティングファームやクリエーターなどプロジェクトベースで働く長期出張者と、シニアエンジニアなどを中心としたデジタルノマド人材。現在は米国の4都市で100室ほどを運営しており、ユーザーは平均で1回あたり2カ月程度滞在するという。

利用料金は都市や物件などによって異なるものの、大まかな目安は月額で5000〜6000ドルほど(1ドル140円換算で70万円〜84万円程度)と、決して安価なわけではない。だがこれまでAirbnbの物件や長期滞在型向けのホテル、既存のサービスアパートメントで仕事をしていたユーザーからすると、それらの施設には課題が多く、「このぐらいの金額を支払ってでも、もっと良い環境を手に入れたいというニーズがある」と内藤氏は説明する。

「ユーザーインタビューをしていて好評なのは、『仕事環境が保証されていること』と『質が一貫していること』です。ホテルやAirbnbの物件はWi-Fiやデスク環境などが実際にチェックインするまでわかりませんが、Anyplaceの場合はその点を担保しています。また困ったことがあれば現地のコンシェルジュが対応してくれるため、ホスピタリティの観点で気に入ってもらえることも多いです」(内藤氏)