内藤氏の友人が、Airbnbで借りていた滞在用の物件に重たいモニターをわざわざ運び込んで仕事をしている姿を目にしたこともヒントとなった。「そこまでして仕事環境にこだわるのであれば、リモートワークに特化した物件を作ればチャンスがあるのではないかと感じた」という。
通常であれば事業基盤が小さいスタートアップが不動産会社から物件を仕入れるのはハードルが高いが、コロナ禍で空室が増えていたことも内藤氏たちにとってはプラスに働いた。自ら営業し、物件の調達に成功。まずはテスト的に1部屋だけ運営してみると、すぐに大手IT企業のデータサイエンティストの利用が決まった。
反応が良かったことから手応えを掴み、内藤氏は正式なサービス化を決断。2021年4月に「Anyplace Select」としてローンチする。
投資家から800万ドルを調達、将来的には短期利用ニーズにも対応へ
その後のAnyplace Selectの拡大により、会社は再び成長軌道に乗った。会社としてもより大きな可能性が見込めるAnyplace Selectに注力すべく、サービスブランドをAnyplaceに統一した上で、マーケットプレイス型の旧Anyplaceを閉じることを決めた。
現在のサービス上では自社で仕入れた物件のみを扱っているため、「サービスの体験全体を管理できること」がマーケットプレイスとは異なるポイント。一方で物件や家具の調達ために、先行して資金が必要となるビジネスでもある。
Anyplaceでは今後の成長に向けて、国内外の投資家から新たに800万ドルを調達。著名な個人投資家でもあるジェイソン・カラカニス氏が立ち上げた米LAUNCH Fundやアーリーステージ向けVCの米CapitalXに加えて、日本の三井住友海上キャピタル、FreakOut Shinsei Fund、デライト・ベンチャーズなどが今回のラウンドに参加した。
Anyplaceはシリコンバレーバンクから200万ドルのデットファイナンスも実施しており、それも含めた調達総額は1000万ドル。この資金を用いて組織体制の強化と共に物件の拡大に取り組む。
まずは長期滞在を軸に都市や物件数を拡大しながらサービスの成長を目指すが、将来的には短期利用にも拡大していく構えだ。
短期の運用の場合には規制の問題がネックになるが、中小規模のホテルなどと契約し、内装を変えて提供する方法を取れば、ホテルと同じように短期間で貸し出すことができる。サービスの方向性は異なるものの、2022年にSPACを介してNASDAQに上場したSonderのようなプレーヤーも存在する。