2021年4月のローンチから2年強。まだまだ対象エリアや物件数は限られているものの、年間の売上は「Run Rate(直近の売上高をベースに推計した予測値)で430万ドル規模」まで拡大。この1年でも3倍近くの成長を遂げているという。

「このペースで拡大できれば年内には1000万ドル規模も目指せるくらいには伸びてきています。1600室ほど運用できれば1億ドルを超えるくらいの事業規模が見込めるので、まずはそこを目指します」(内藤氏)

基本的にユーザーは物件に居住するので、キッチンなどのスペースも完備。物件によっては(建物内に)フィットネスジムなども備える。
ほとんどのユーザーは物件に居住することになるので、キッチンなどのスペースも完備。物件によっては(建物内に)フィットネスジムなども備える。

コロナで売上半減も、ユーザーの声から新たな事業機会を発見

現在運営するサービスは約2年前に始めたものだが、会社の創業自体は2015年までさかのぼる。渡米して起業するものの、最初の2年は苦戦。内藤氏は複数のサービスに挑戦したが、どれもうまくはいかなかった。

そんな時期を経て、2017年にローンチしたのが「ホテルを賃貸できる」ことをコンセプトとしたAnyplace(現在のAnyplaceとは異なるサービス)だ。

元々のAnyplaceはホテルやコリビング物件などの一室を月単位で手軽に賃貸できるマーケットプレイスで、サービス上に掲載している物件は基本的な家具やインフラ周りのセットアップが完了している点が特徴だった。内藤氏自身が引っ越しにストレスを感じていたことから、「ホテルに住む」感覚で、フレキシブルな住の体験があれば便利なのではないかと考えたことがきっかけだ。

そこから発展した現在のAnyplaceは年々利用者が増加し、事業規模も拡大。国内外の投資家から数億円規模の資金調達も実施した。

ただ、さらなる成長に踏み切ろうというタイミングでコロナが本格化。ロックダウンの影響などから予約のキャンセルや早期退去などが相次ぎ、Anyplaceも「2020年のGMV(取扱高)は半分以下に減った」ほどの打撃を受けた。

一方で、コロナ禍において新たな働き方が広がるにつれて、デジタルノマド人材などの利用が少しずつ増えていった。

「これで一気に事業が回復すると思ったのですが、実際には使ってくれたものの、なかなか契約が延長されなかった。ユーザーにフィードバックを求めると『Wi-Fiが遅い』とか『デスクが小さい』といった声が聞こえてきたんです。扱っている物件がコロナ前の働き方に最適化したものだったため、(リモートワークに慣れた)新たなユーザーが満足するような物件がないことが原因だとわかりました。もともとマーケットプレイスとして(既存の物件を掲載するモデルで)運営してきたので、自分たちで在庫を持つという発想はありませんでした。ただニーズに応えるには新しい物件を自分たちで作る必要があると感じて動き出したんです」(内藤氏)