「これまではテレビ番組の合間に流れていた広告が“テレビCM”でしたが、コンテンツが常時同時配信され始めたら、テレビCMと動画広告の境目がなくなってきます。そうなったときに、ネットで培った広告制作のノウハウをもとにテレビCMを制作したらどうなるのか。今後、テレビCM自体もデータが取得できるようになってくるので、そのデータをもとにテレビCMを改善していくことは、私たちの強みを生かせると思ったんです」(須藤氏)
Kaizen Platformは2017年頃からKaizen Adを本格的に展開しており、これまでにFacebookやInstagram、Google、Amazonといったグローバルの大手動画プラットフォームからクリエイティブパートナーとして認定されている。須藤氏は「この3年間で動画広告のベストプラクティスやノウハウを蓄積できたことが大きかったです」と言い、その実績やノウハウがあったからこそ、テレビ広告市場に進出することができたという。
狙うは「テレビCMの民主化」
Kaizen Platformが、Kaizen TVの提供を通して狙うのは「テレビCMの民主化」だ。従来の全国で放送するテレビCMは、某大な予算がある大きなブランドしかできないマーケティング施策だったが、須藤氏は「エリア限定でテレビCMを実施したいニーズもある」という。
「テレビがネット化していったり、テレビCMが運用側に変わっていったりするときに、従来の広告宣伝目的ではないテレビCMがたくさん入ってくると思います。例えば、大手メーカーは新しい商品を発売したら、スーパーやドラッグストア、コンビニなどの棚を取るためテレビCMの実施を含めた施策を提案して交渉しますが、その一方で規模の小さいブランドがエリア限定でテレビCMを実施したいケースもあるはずです」
「実際、ネット広告も販促を目的とした広告はたくさんあります。YouTubeでエリアターゲティングして、限定商品を宣伝するといったものです。だからこそ、私たちは“販促費”を狙い、予算もないブランドでもエリア限定で安い価格でテレビCMを実施できる世界をつくっていきたい。そうすれば、テレビCMのあり方が変わってくるはずです」(須藤氏)
前述した通り、同市場ではすでにラクスルがノバセルを展開している。今後も類似サービスが多く登場することが予想されるが、須藤氏はKaizen TVの可能性をこう説く。
「Kaizen Adを3年ほど展開してきて何よりも意外だったのが、ほとんどのブランドが動画素材を持っていないことです。当初はすでに多くのブランドは動画素材を持っていて、私たちはそれを再編集するかと思っていたのですが、8割のブランドは動画素材を持っていませんでした。それでも『動画広告をやりたい』と言うんです。Kaizen Adがここまで成長できた理由は静止画から動画広告を制作できた点にあります。それによって初めて動画広告を実施してみたい会社が使ってくれました。きっと似たような動きがテレビ広告市場でも起きると思っているので、個人的には大きな可能性を感じています」(須藤氏)