「UberやInstagramなど、今成功しているスタートアップはすべて、UI/UXデザインを重視してプロダクトを作っていました。その姿を見て『今後、UI/UXデザインがより重要になる』と確信しました。しかし、当時の日本ではデザインの価値は低く、できる範囲も限られていました。グッドパッチを創業することで、デザインの重要性や価値を高められると思ったんです」(土屋氏)

そして、ソフトウェアのUI/UXを中心としたデザインサポート支援を開始。記念すべき1社目のクライアントであるGunosyのニュースアプリ「グノシー」がヒットして、立ち上がりは順風満帆だった。

2011年当時といえば、国内でスタートアップムーブメントが過熱し始めた時期だ。土屋氏自身も、同世代もしくは自分より年下の学生が起業し、ベンチャーキャピタル(VC)などから出資を受けている姿を見ていた。だが、グッドパッチが出資を受けて、スタートアップ的な経営を行うイメージはなかったという。

「Gunosyのおかげで、当時僕1人だった会社に問い合わせが殺到し事業は軌道に乗りました。デザイン事業ということもあり、このときはスタートアップのように出資を受けて一気に会社を大きくするイメージは持っていませんでした。どちらかというと「社員や家族を養えるくらいの業績がないとイケてないよなぁ」と思っていた程度だったんです。一方で学生時代から孫正義さんや三木谷浩史さん、藤田晋さんなどの起業家の影響を受けている部分はあったので、チャンスがあれば、大きく挑戦したいという野心は心のどこかでは持っていました。」(土屋氏)

 

突然やってきた、キャッシュアウトの危機

そんな土屋氏だが、2013年にデジタルガレージから出資を受けることになる。理由は、「キャッシュアウト(編集注:一般的には「資金が流出すること」全般を指す言葉だが、スタートアップコミュニティでは「資金が流出してゼロになる」という意味で使われることが多い。ここでもその意味で使用している)」の危機だったからだ。

グノシーの成功から順調に売り上げ1億円まで成長していたグッドパッチだったが、当時は資金繰りが甘く、キャッシュアウト寸前の状況に陥ったのだという。そこで銀行から借り入れをしようと考えたが、当時のグッドパッチの与信では2000万円程度の借り入れが限度だと言われた。急激に組織が拡大している中で、その額を借り入れただけでは不安定な経営が続くことは予想された。