株価は約6割ダウンし、吹き飛ばした時価総額は約2兆4200億円──。

 ソニーの業績低迷を引き起こしたかつてのトップが、ついに「卒業」する。ハワード・ストリンガー取締役会議長はニューヨークで8日に行われた講演で「ソニーから卒業しようと考えている」と表明。6月の株主総会をもって議長を退任する意向を明らかにした。

 ストリンガー氏がソニー初となる外国人CEO(最高経営責任者)に就任したのは2005年6月。以降、約7年間にわたりCEOを務めた。12年4月にトップの座を“お気に入り”の平井一夫社長に引き継いだ後も、議長として経営の中枢にとどまり続けた。

「サイロを壊せ」

 CEOに就任したストリンガー氏が、ソニーの縦割り組織を農場の穀物貯蔵庫になぞらえ、壊すよう訴えた有名なスローガンだ。ところが、就任から現在に至るまでの経営上の数字を拾っていくと、サイロではなく、ソニーという会社の“米びつ”そのものを壊してしまったようにも見えてくる。

 売上高一つ例に取ってみても、ソニーの凋落は著しい。07年度をピークに売上高は4年連続で減少し、11年度は12年ぶりに7兆円を割り込んだ。12年度は増加に転じる見通しだが、大幅な伸びは期待できそうになく、ストリンガー体制が始まった05年度と比べ、約12%縮小する見込みだ。

 落ち込みを見せる売上高以上に、収支面での数字は厳しい。08~11年度は4期連続の最終赤字で、中でも11年度は純損失約4566億円と過去最悪を記録。4年間の累積赤字は約8560億円に達した。とりわけ、8期連続で赤字のテレビ事業など、主力のエレクトロニクス部門の落ち込みは深刻だ。