2013年9月に発表されたクックパッドがコーチ・ユナイテッドを買収する、というニュースは福崎氏にとってまさに青天の霹靂(へきれき)だった。

「習い事のCtoCプラットフォームの会社とCGMの会社が繋がるということは、『クックパッドは本気で料理のCtoCの会社になろうとしているのかな?』と想像しました」(福崎氏)

まずはプラットフォームを運営する企業で自分のスキルを磨き、将来的にそのスキルを自分が好きな“食”の分野に生かそう──コーチ・ユナイテッドに入社したのは、そんな考えからだった。その後、福崎氏は2016年2月に代表を退任した有安氏の後を継ぎ、コーチ・ユナイテッドの代表に就任。

そして2018年、コーチ・ユナイテッドがクックパッドに吸収合併されるタイミングで、同社に入社を決意。その約3年後、福崎氏はクックパッドのJapan CEOとなった。

お母さんが「家庭の食卓」を担う時代でなくなった

福崎氏のCEO就任後、会社を取り巻く環境は大きく変化している。先述したとおり、クックパッドは2021年1~3月期・4〜6月期ともに連結決算で、最終損益が赤字に転落。さらに、コロナ禍で人々のライフスタイルも変わった。

そうした変化を踏まえ、現在クックパッドが注力しているのが、生鮮食品のネットスーパー「クックパッドマート」だ。クックパッドマートは、精肉店や鮮魚店などの専門店や地域の生産者が販売する「こだわり食材」を送料無料で1品単位で注文できるサービスである。

注文した商品は、自宅近くの駅やコンビニなどに設置されている「マートステーション」に届けられるので、好きな時間に商品をピックアップできる。2018年にサービスを開始し、3年間でマートステーションの数は首都圏の駅やコンビニ、マンションを中心に500を超えている。直近では東京モノレールと連携するなど、鉄道会社との連携に力を入れている。

クックパッドマートでの商品受け取りイメージ 画像提供:クックパッド
クックパッドマートでの商品受け取りイメージ 画像提供:クックパッド

もともと、レシピ検索のサービスとしてスタートしたクックパッドが、生鮮食品のネットスーパーに力を入れる理由──その背景には、世帯構造の変化がある。

総務省が発表している「人口動態・家族のあり方等社会構造の変化について」によれば、単独世帯は増加の一途をたどっており、2050年には全世帯の4割を占めるという。また、核家族世帯の比率も右肩上がりで増え続けている。

「これまでの世帯構造は“夫婦と子ども”からなる世帯が主流。お母さんが家庭の食卓を担い、毎日の献立を考えて料理をつくっていました。そうした時代において限られた時間、予算の中で家族が喜ぶ料理をつくるために“レシピ検索”は受け入れられてきました」