ドイツでは1年半で「誰もが知る」ほど有名なサービスに

Sifted記者のミリアム・パーティントン氏
Sifted記者のミリアム・パーティントン氏 画像提供:ミリアム・パーティントン氏 (拡大画像)

前述のとおり、Gorillasは食料品を中心に飲料や洗剤なども取り扱う日用品のデリバリーサービスだ。本国のドイツやイギリス、フランスなどヨーロッパ諸国を中心に展開し、5月にはアメリカにも進出した。ローンチからはまだ1年半ほどだが、「ドイツでは今や知らない人がいないほど有名」とパーティントン氏は言う。

「Gorillasは特に若い世代のユーザーを獲得するため、巨額の資金をマーケティングに投じています。そのため私の母や父も知るほどの有名サービスへと成長しました。最近ロンドンを訪れた際にも、バスや地下鉄はGorillasの広告に覆われていて、驚きました」(パーティントン氏)

従業員を苦しめる「10分配達」のポリシー

Gorillasの強みはデリバリーの速さだ。サービスのウェブサイトやアプリでは「Groceries delivered in 10 minutes(日用品を10分でデリバリー)」とうたっている。だが、このポリシーが社員や配達員を苦しめる元凶となっているようだ。

「配達員たちは制限時間以内に商品を届けるよう本部から圧力をかけられており、不快な思いをしていると話しています。これまでの取材から、デリバリーに10分以上かかるケースや、商品が足りていない状態で届けられていたケースがあったことを把握しています。Gorillasでは商品の在庫が切れた際に、配達員に対して、近所のスーパーマーケットで補充してデリバリーするように指示していたとも聞いています」(パーティントン氏)

ドイツでは7月以降、労働環境の改善を求めるGorillasの配達員たちによるデモが頻発している。そのため「Gorillasは高い認知度の獲得に成功したものの、人気は下がってきている状況です」とパーティントン氏は話す。

「私が住むベルリンでは年中、Gorillasの配達員たちによるデモが開催されており、いくつかの裁判も起こっています。そのためGorillasでの仕事をボイコットする人たちが増えてきています」(パーティントン氏)

ベルリンで開催された「Gorillas」配達員たちによるデモ
ベルリンで開催された「Gorillas」配達員たちによるデモ 画像提供:ミリアム・パーティントン氏

Siftedの取材に応じたGorillasの元社員も以前、デリバリーの遅延が原因でCEOのカーン・シュメール氏から脅迫とも取れるビデオメッセージが届いたことを明かしている。

その元従業員いわく、5件のデリバリー遅延が発生した際、シュメール氏は「WhatsAppのグループに私たちを大声で罵倒するビデオを投稿した」という。また現在Gorillasで勤務する複数人の社員も「恐怖によって支配されている」と証言。1人の社員は「誰もがシュメール氏が参加する会議に出席することを恐れている」とコメントしている。