当時日本企業の間でも動画ブームが到来し始めていたが、自前で動画を配信するには配信用のサーバーやプレイヤーなどを取り揃える必要があり、ハードルが高かった。

その難易度を下げるような仕組みができれば、需要があるのではないか。そんな考えから作開発したミルビィに対する反応は、当初からそれまでのプロダクトとは全く違ったという。なけなしの資金を使って参加した展示会では複数社から引き合いがあり、いきなり大手企業への導入も決まった。

ミルビィをローンチした当時の社員数は4〜5名ほど。この事業に手応えをつかんだ中川氏は、そこから徐々に受託事業の割合を減らし、ミルビィに注力するべく会社の方向性をシフトしていく。

「そのうちYouTubeに全部置き換えられるんじゃないか」

ローンチ以降順調に広がり始めていたミルビィだったが、大きな山場が2015年に訪れる。企業が日本でも存在感を増していたYouTubeを本格的に使い始めた結果、新規の見込み客だけでなく、既存顧客までもがリプレイスされだしたのだ。

たとえば当時のミルビィの主な利用例の1つとして、企業がCM動画などを自社のコーポレートサイト上で配信する際に使われていた。そうした動画は徐々にミルビィではなく、YouTubeで投稿されるようになっていった。

「(YouTubeは)そもそも無料で使えることもあり、既存顧客からもYouTubeで十分ですと言われ、特にtoC向けの動画配信がことごとく取られていったんです。当時は正直『そのうちYouTubeに全部置き換えられるんじゃないか』という危機感もありました」(中川氏)

その状況下で中川氏はどこに活路を見出したのか。同氏が取ったアプローチは大きく2つ。「YouTubeができないことに注力すること」と「YouTubeが広がったことで生まれる企業の新たなニーズに応えること」だった。

「YouTubeができないこと」に注力、社内向け用途に勝機

前者に関してはまさに現在のミルビィポータルがそうだ。toC向けの動画がYouTubeへと置き換わっていく一方、その後も“クローズドな環境”での動画配信ツールとしては引き合いがあった。

当初はイーラーニングを提供する会社やファンクラブサイトなどの裏側で利用されることの方が多かったが、次第に企業内での課題解決手段として活用される例が増加。現在は全体の約6割を占めるまでになっているという。

ミルビィポータルのイメージ
ミルビィポータルのイメージ

冒頭でも触れた通り、特にコロナ禍では社員同士のコミュニケーションや人材教育、新メンバーのオンボーディング(組織定着)における動画のニーズが顕著になった。