「代表的な施設が米シアトルにあるトレーニング施設『ドライブライン』です。2020年オフに大谷翔平さんが通っていたことでも話題になりましたが、アメリカではデータに基づいてトレーニングすることはもはや当たり前になっているんです」(伊藤氏)

例えば、大谷翔平が投げる“落ちる変化球”を投げてみたい、としよう。アメリカでは大谷翔平の落ちる変化球の回転数や回転軸、変化量といったデータが取得できるため、そのデータをもとに調整をかけていけば、3カ月後にはほぼ同じ球が投げられるようになるという。

「いま、アメリカでは野球をうまくなりたいと思ったら、最新鋭のツールを活用して、いろんなデータを収集し、それをもとにトレーニングしていきます。ただ、日本ではいまだに『練習の合間に飯を食べろ』『たくさん投げ込め』『たくさん振り込め』といった根性論によるトレーニングが常態化している。もちろん、それが絶対にダメだとは思いませんが、自分は野球のトレーニングにもきちんとデータを使う文化を作りたいんです」(伊藤氏)

Knowhere代表取締役の伊藤久史氏
Knowhere代表取締役の伊藤久史氏 筆者撮影

2020年12月にmint、East Ventures、その他個人投資家から合計5000万円の資金を調達。また金融機関などから5000万円を借り入れ、総工費1億円のジムを建設した。伊藤氏が立ち上げた野球ジムは、言い換えるならばドライブラインの日本版。本気で野球がうまくなりたいと思っている人たちに、うまくなれるための環境を提供する場所だ。

「プロの選手はそれなりのコストをかけられると思いますが、アマチュアの選手たちは数十万円単位のお金を支払うのは難しい。そういう意味では、プロの選手もそうですが、自分はアマチュアの選手たちにぜひ、このジムを使ってほしいと思っているんです」(伊藤氏)

 

200人の熱量高い会員をもとに、教え合うコミュニティを形成

その一方、「誰もが自由気ままに使えるジムにはしたくない」という考えもあり、外苑前野球ジムの会員費は月額2万7500円となっている。伊藤氏は価格を決めるにあたり、「(24時間営業フィットネスクラブの)エニタイムフィットネスを研究した」という。

「エニタイムフィットネスは価格を安くして、なるべく多くの人に入会してもらう。稼働率は低いけれど、休眠会員も含めた会員費で採算をとるモデルです。一方、自分たちのジムはきちんと使ってもらわなければ意味がない。なおかつ、本気でうまくなりたいと思っている人たちに来てほしいと思っています。ビジネスもそうですが、自分に一定の投資をすることで人は成長していく。だからこそ安くもなく、高くもない、この価格にしました」(伊藤氏)