同ジムには、ラプソードが6台(ピッチング2台、バッティング4台)導入されているほか、プロと同じレベルの粘土質のマウンドが2つ、バッティングゲージが2つ完備。それらを使って投球練習や打撃練習などが行える。会員費は月額2万7500円・入会金が3万3000円(ともに税込)となっており、会員は24時間365日利用することができる。

 

昨今、フィットネスジムやパーソナルジムは数多く立ち上がっているが、“野球”に特化したジムというのはあまり耳にしない。なぜ、野球ジムを立ち上げようと思ったのか。外苑前野球ジムを手がける、Knowhere(ノーウェア)代表取締役の伊藤久史氏に話を聞いた。

HEROZの経験を通じて、「スポーツ×データ」に挑戦

Knowhereの設立は2020年9月。伊藤氏は、現役の将棋のプロ棋士を打ち負かした将棋AIの開発で注目を集めたAIスタートアップ・HEROZで働いた経験を持つ人物。HEROZでは主に金融、エンタメ領域において、AI関連の開発に取り組んできた。

「大量のデータとAIを掛け合わせることで、業務を自動化できたり、複雑な仕事を簡単にできたり、さまざまな付加価値を創出することができます。AIの社会実装に取り組む中、自分が好きなスポーツ領域に目を向けてみたら、全くAIやデータの活用ができていない。また、スポーツのトレーニングなど現場のDXに取り組もうとしている人は知る限りではいませんでした。そうした状況を踏まえ、自分のこれまでの経験と好きなことを掛け合わせ、『スポーツ×データ』に取り組んでみたいと思ったんです」(伊藤氏)

会社を立ち上げた当初、ターゲットにしていたのは“ゴルフ市場”。伊藤氏は「市場規模も大きく、巨大なスペースもいらない。またお金を落とす人たちも明確に見えていた」と当時を振り返るが、考えていくうちに“自分がやる意義”を見出せなくなっていった。

「ゴルフのジムはすでにいくつかあります。それを後追いで自分がやっても仕方がない。新しいことに挑戦できる立場にあるのに、人と同じことをやるのは全然リスクをとっていないなと思ったんです。そこで誰もやっていない、それでいて自分がやるべき意義のある領域を考えた結果、たどり着いたのが野球でした」(伊藤氏)

1億円を投資し、日本版「ドライブライン」を建設

伊藤氏はMLBの試合を欠かさず観るほどの野球好き。そのため、2016年ごろからMLBでは結果だけでなく、トレーニングの段階からデータを活用していることを知っていた。

「映画『マネーボール』で有名になった、さまざまな統計データから選手を客観的に評価するシステム『セイバーメトリクス』は、あくまで試合での成績など“結果”に対する分析です。そこから一歩進み、アメリカでは結果を出すために最先端のデータに基づいて、野球のトレーニングを行うようになっています」