現在、想定している会員数は200人ほど。その200人でコミュニティをつくり、コミュニティ内で交流したり、技術を教え合ったりできるようにするという。

「ドライブラインも会員のみんなで教え合ってるんですよね。自分たちもそういう場所にしたい。特に外苑前野球ジムには野球をうまくなりたい人たちしか集まっていないので、会員同士で高め合っていけるような環境をつくっていきたいですね」(伊藤氏)

Knowhereのビジネスモデルは現状、ジムの会員費のほか、(外苑前野球ジムをホームグラウンドとして使用する人気野球YouTuber「トクサンTV」や「弾丸ライナーズ」の動画内へのスポンサー企業のロゴ掲載による)スポンサー収入(編集部注:プロ野球中継のバックネット裏の広告のようなイメージ)がメインとなっている。

将来的にはジムで収集したデータをもとに、野球版「スタディサプリ」を開発

今後、都内だけでなく、パートナー企業と組んで地方にもジムを立ち上げる予定だという。そして、その先にはジム内で収集したデータをもとに(理想的な変化球を投げるための)アルゴリズムなどを構築し、それらをアプリを通じて提供する構想もあるそうだ。

「すでにスマートフォンのカメラで、ボールの回転数を計測することができます。また、この1年ほどでベースとなるアルゴリズムも構築しました。とはいえ、データの精度を向上させたり、いろんなパターンを検証したりするためには、たくさんのデータが必要です」

「そういう意味で、ジムはデータを取得するための研究所でもあります。ジムでたくさんのデータを収集し、それをもとにアルゴリズムをつくり、最終的には有料課金型のアプリを提供する。将来的には、そういった展開も考えています。ジムは真似されるかもしれませんが、アルゴリズムは真似できない。それが会社の競争優位性でもあります」(伊藤氏)

具体的には、スマートフォンで10球ほどの投球フォームを撮影したら、「こういう投げ方だと肘を痛めるからやめた方がいい」「こういう変化球が合っていると思う」といったフィードバックが出てくる。そんな世界観を目指していくという。分かりやすいイメージとしては、野球版の「スタディサプリ」だろう。

「野球は人がやっている部分が大きいので、やっぱり人の思い込みが指導に大きく影響しているんですよね。例えば、今年沢村賞を獲得した山本由伸選手の投げ方は『あまり良くない』と言われます。ただ、圧倒的なパフォーマンスを出している」

「こういう話はきっとたくさんあると思うんです。人間が『これが正しい』と思ってた、いわゆる指導の定石がデータを解析した結果、ひっくり返ってしまう。それはスポーツの領域でも十分にあると思っていて、自分はKnowhereを通じて、そういう発見をしたいと思っています」(伊藤氏)