年収が上がらない、モチベーションが上がらない、仕事と家庭の両立がうまくいかない ── そんな悩める人たちに「圧倒的に面白い」「共感と刺激の連続」「仕組み化がすごい」と話題なのが、森武司著『スタートアップ芸人 ── お笑い芸人からニートになった僕が「仲間力」で年商146億円の会社をつくった話』だ。“元芸人社長”であるFIDIA(フィディア)の森社長は、吉本のお笑い芸人引退後、4年間の引きこもりニート、家電販売員を経て仲間と起業。現在年商146億円、Financial Times「アジア太平洋地域急成長企業ランキング 未上場日本一」、「ベストベンチャー100」受賞、経済産業省選定「地域未来牽引企業」、11事業すべて黒字化、新卒500人採用、創業以来18年連続増収増益を果たした。また、素人ながら化粧品開発に取り組み、あの資生堂を抜き、アマゾン年間売上1位となった注目の経営者でもある。まさに人生を大逆転させた元芸人社長だが、その秘密はデビュー作で一挙公開した「仲間力アップマル秘マニュアル」の6大奥義にあるという。本連載では初の著書『スタートアップ芸人』の一部を抜粋・編集しながら、「仲間力(=仲間をつくる力)」アップによる人生大逆転の法則を見ていきたい。

泣くPhoto: Adobe Stock

「おまえは恵まれているなあ」
という父の言葉

 本書では、僕がNSC(吉本総合芸能学院)をやめ、引きこもりニートになった話をした。

 僕が引きこもり始めても、両親は何も責めなかった。

 母は「別に引きこもりでもかまへん。ただごはんだけは一緒に食べよう」と言った。

 父は「おまえは天才やから、いつか大物になる」と繰り返した。

 父は子どもの頃から「俺はおまえの才気にほれている」と言ってくれ、8軒ほどの小さな塾だが、模試で数学1位になったときは「数学ができるヤツが結局一番賢い」とほめてくれた。

 もう一つ、父が注目していたのが僕の「仲間力(=仲間をつくる力)」だった。

「おまえのところには人が集まってくる。
どこへ行っても自然とリーダーになる」

 確かに僕のまわりには自然と人が集まっていたので、「森軍団」と呼ばれていた。

「吉本に行こう」と僕が言うと、「俺も行く」と高校時代の3人が集まってくれた。

 父は宮大工の息子だった。

 祖父が宮大工の棟梁で全国各地の寺院を建てたり改修したりしていたので、父は祖父について飛び回っていた。

 半年、1年ごとに別の現場に移動したため、父には友達がいなかった。

 だから幼なじみの西たちが家にくるたび、

「こんな状況なのに頻繁に友達が遊びにきてくれて、いろんなところに連れ回してくれるなんておまえは恵まれているなあ」

 と言っていた。

運命を変えた
NSC18期生からの手紙

 引きこもりを始めて4年目の2004年。

 この夏、記録的な猛暑日が続き、35度以上の酷暑日が大阪で14日もあった。

 僕はTシャツに半ズボン姿でベッドに寝転び、ロン毛の自分を鏡で見ては「もうダメや」と思っていた。そんなとき、

「これ読め!」

 と西が手紙の束をポンと床に置いた。

「なにこれ?」

とにかく読め。
今日はこれだけ置いていくから。
絶対読めよ。
それ以上は何も言わん

 芸人仲間だった市川、網野も口々にそう言った。

 僕は何度も説得されるのがうっとうしくなっていた。

「もうええって。わかったから帰ってくれ」

人生でいちばん泣いた日

 夜になってようやく僕は手紙を開けた。

 それはNSC同期からの手紙だった。

「あのネタ、最高やったな」
「野性爆弾との対決、ベストバウトやったで」

 一人ひとりの顔と声がはっきり浮かんだ。

 決勝のステージで僕が心折れた瞬間を見守ってくれていたヤツらだ。

「復活してくれ」
「おまえは大天才」
「おまえが俺たちのナンバーワンなんや」

 芸人は普段、真面目なことを言わないし、「おまえが一番おもろい」なんて口が裂けても言いたくない。

 そんなヤツらが本気で僕を励ましてくれた。

 僕は泣いた。

 それまでの人生でいちばん泣いた。

 汗と涙と鼻水でぐしゃぐしゃになりながら手紙を読んだ

「普段、絶対こんなこと言わへんヤツなのに」
「無精者のあいつが便箋3枚も書いてくれたんか」

パチンとスイッチが入った瞬間

 僕はハッとした。

「この手紙、どうやって集めたんや?」

 西、市川、網野たちが同期に連絡を取ってくれたのだ。

 芸人を辞め、連絡が取れなくなっているヤツもいたはずだ。

 そのうえで、あの日以来4年間引きこもりニートという僕の状況を説明し

「マジな手紙を書いてくれ」

 と頼んでくれたのだろう。

「あいつら、ほんまに」

 泣きながら手紙を読むうち、不思議な感情が湧き上がってきた

「人生変えるなら今や。
復活できるとしたら今しかない」

 パチンとスイッチが入った気がした。

(本稿は『スタートアップ芸人 ── お笑い芸人からニートになった僕が「仲間力」で年商146億円の会社をつくった話』の一部を抜粋・編集したものです)