2024年「新NISA」開始で日本株は上昇するか、相場の下支えになってもけん引役にはならない?Photo:PIXTA

2024年から新NISAがいよいよ始まる。相場のけん引役として期待する声も少なくない。しかし、これまでのNISA口座の動向を見る限り、相場を下支えすることはできても、上値をけん引することはなさそうた。ただ、日本の投資家の志向が安全性から収益性へ変化していることは中期的なドライバーとして注目に値する。(UBS SuMi TRUSTウェルス・マネジメント ジャパン・エクイティ ストラテジスト 小林千紗)

NISAを通じた投資資金は
毎年買い越しを続けている

 新NISA(少額投資非課税制度、Nippon Individual Savings Account)で日本株は上昇するのか。

 答えは、下支え効果は期待できるが上昇をけん引するほどではない、と考える。そもそもNISA資金が流入するかどうかは株価次第。とはいえ、近年の日本の投資家行動には過去数十年なかった変化の兆しが表れてきており、構造的転換となれば日本株における個人投資家の存在感が増していくきっかけになるかもしれない。

 まずは、現状のNISAを通じて実際どの程度、個人投資家が投資をしているかを振り返ってみたい。

 2023年6月時点での口座数は1941万口座、22年末での残高は13.2兆円。株価の変動により新規口座数・新規投資資金は毎年ばらつきがあるものの、14年のNISA開始から平均すると、口座は毎年120万ほど増え、残高も毎年1.3兆円増加している。ちなみに、18歳以上の人口に占めるNISA口座保有比率は19%にとどまる。

 NISAの投資先は日本株だけではなく、投資信託やETF(上場投資信託)を通じた海外上場株式への間接投資、もしくは海外個別株への直接投資も含まれる。そのため、投資残高のうち実際に日本株にどの程度資金が振り向けられているかはわからない。

 しかし、毎年ネットで買い越し(買い-売りの総額がプラス)であることは注目に値する。なぜなら、東京証券取引所が公表する個人投資家の日本株売買動向を見てみると、個人投資家は14年から22年までの9年間のうち22年を除き日本株をネットで売り越し(買い-売りの総額がマイナス)しているからだ。

 つまり、NISA口座を通じた投資は短期売買が中心の投資資金というより、安定した投資資金の特性が強いといえる。だとすると、NISAの投資資金が拡大すれば日本株にとって一定の株価下支え効果が期待できる。

 では、新NISAが日本株の上値をけん引するまでには至らないと考える理由はなにか。次ページ以降検証していく。