そして柴田氏はCBDを米国から輸入すべく、生産者に「茎と種から抽出したCBDをもらえないか」と問い合わせたところ、想定外の答えが返ってくる。

「10社くらいの生産者に電話したのですが、どこも成分は葉や穂から抽出していて、茎と種は基本的に捨てている、と言われたんです。実際、カリフォルニアに住んでいた頃からCBDは茎と種以外から多く抽出されていることは知っていましたが、改めて論文を調べてみたところ、それが確信に変わりました。その事実を知ったときに、日本でCBDブランドをやるのが不可能だと思いました」(柴田氏)

ほぼ諦めかけていた柴田氏だったが、CBDについてリサーチを続けていくと、ひとつの大きな可能性にたどり着く。それが有機化学合成のCBD成分だった。

「すでに麻由来のTHCが供給されている米国では有機化学合成のCBDのニーズはありません。ただヨーロッパは日本と似ている法律があり、茎と種から抽出した成分をOKだけれども、葉などから抽出した成分は使用禁止なんです。だからこそ、ヨーロッパのCBD市場も米国ほどに成長していません。それでリサーチを進めていき、チェコにCBDの有機化学合成を手掛けている会社を見つけ、彼らにコンタクトをとり提携することにしました」(柴田氏)

チェコのCBDpotのメンバーたち

柴田氏が出会ったのは、チェコのCBDepot。彼らは2015年にチェコ科学アカデミーの専門科学者と共に合成CBD原料の研究および開発に成功している。柴田氏によれば、バランスドはCBDepotと提携するほか、日本における販売代理店契約を交わしたという。有機化学合成のCBD成分は麻由来のCBD成分と比較すると、原料の価格が3〜5倍ほど高くなるが、日本で100%合法なCBDブランドを立ち上げるには、その方法しかなかった。

「有機化学合成のCBD成分は安全なのか、効果はあるのか、最初自分も疑問に思っていたのですが、テストで確認したところ99.95%CBDであることが分かったんです。それなら問題ないだろうと思い、麻由来でないCBDを採用することにしました。当初はサプリブランドを作りたかったのですが、私たちは化粧品原料だけしか輸入できず、食品として輸入できないのでサプリを諦め、化粧品から始めています」(柴田氏)

なぜ、業界が盛り上がっている米国ではなく、日本で事業を展開することにしたのか。柴田氏に聞くと、こんな答えが返ってきた。

「米国で事業を展開しても競合優位性はありません。またアメリカで日本語喋れてもアドバンテージはありませんが、日本で英語が母国語だと、それが大きなアドバンテージになるんです。現に海外の論文を全部読めたからこそ、有機化学合成のCBD成分という存在に気づき、日本で完全合法なCBD事業を展開できたわけですから」(柴田氏)