“機能体制”の視点から見た大和・伊勢・出雲の関係性

 一方、伊勢と出雲の関係に関しては、様々な視点から、この関係性を捉えようとした論議がなされてきた。古くからいわれてきたのは、アマテラス大神は、高天原から移動して伊勢にたどりついた神であるのに対し、出雲の神オオクニヌシ神はもともと出雲の神であり、地の神であるという対称の構図である。確かに伊勢神宮は高天原の神、出雲は国津神(くにつかみ)の統合の象徴でもある。いわば天津神(あまつかみ)の主神アマテラス大神と国津神の主神オオクニヌシ神は一対として考えられる神でもあった。

 また、ヤマト政権を中心として、三機能の分担という説を唱えたのが大林太良氏である。記・紀神話には出雲大社、伊勢神宮、そして石上(いそのかみ)神宮にのみ「神宮」の文字を使っているが、この3つは大和の三輪山の石上神宮に対し、伊勢神宮は東南、出雲大社は西北に位置している。

 そして、アマテラス大神を王の職分である主権神にすえ、軍事的な集団が祀る石上の軍事、出雲の豊穣との三機能体制で考えられていたという。いわばこの三神は一体として考えられており、主権、軍事、豊穣の神がうまく働いてこそ、国家と万民の安寧(あんねい)をもたらしてくれると考えられていたというのである。