「経営の神様」と呼ばれた稲盛和夫氏も、新年の神社参拝を欠かさず行っていた。しかし、その神社選びやお参りの仕方は独特なものだった。そして、心から神様に祈願するものの、単なる神頼みには警鐘を鳴らしている。稲盛氏の独特な初詣についてご紹介したい。(イトモス研究所所長 小倉健一)
「経営の神様」稲盛和夫氏が
なぜ“芸能神社”に初詣?
京セラを稲盛氏と共に設立した青山政次氏が『心の京セラ二十年』に記録したところによると、初詣は、京都の車折(くるまざき)神社、八坂神社、伏見稲荷大社に連続して参拝していたようだ。
車折神社は、今では芸能の神社として人気を集める京都市右京区嵯峨朝日町にある神社だ。この車折神社の境内に「アメノウズメノミコト」を祭った芸能神社がある。このアメノウズメノミコトこそ、日本最古の踊り子であり、歌舞(歌と踊り)の始祖神だ。
車折神社にはアイドルや俳優、女優、芸術家などが祈願する「芸能神社」があり、車折神社のホームページには、「あらゆる芸能・芸術の分野で活躍する人たちに強い信仰があり、芸名・ペンネーム・劇団等の団名を記した朱塗りの玉垣(筆者注:神社の周りに巡らせた垣)が『4千枚』以上奉納されている」と記されている。
その言葉の通り、その玉垣を紹介する写真や動画を見ると、車折神社・芸能文化振興会の総裁に就任した観月ありささんをはじめ、そうそうたる名前を確認することができる。お笑い界からはとんねるずの二人、アイドル界からは乃木坂46やAKB48のメンバー、スポーツ界からはジョッキーの武豊さん…。このように、1日中眺めていても飽きないくらい有名な芸能人の名前を記した玉垣が所狭しと並んでいるのだ。
観光客でごった返す京都だが、一度、遊びに行ってみるのも面白かもしれない。
先に挙げた書籍、青山氏が書いた『心の京セラ二十年』を読むと、京セラ創業時の高揚感が、稲盛氏の「初詣」からも伝わってくる。『初詣(昭和三十五年一月一日)』という項目だ。