戦時の商社#10Photo:Twenty47studio/gettyimages

大手商社の中で中国に投融資したリスクマネーが最も大きいのは伊藤忠商事だ。しかも同社の対中リスクマネーは直近3年で5000億円近くも膨れ上がっている。その原因こそ伊藤忠が2015年に6000億円を投資した中国中信集団(CITIC)だ。特集『戦時の商社』(全16回)の#10では、伊藤忠の中国リスクが膨らんでいくからくりと、その本質に迫った。(ダイヤモンド編集部 金山隆一)

膨れ上がる伊藤忠の中国リスク
原因は6000億円を出資したCITIC

 1月11日、伊藤忠商事が初めて時価総額で10兆円を超えた。総合商社では三菱商事に次ぎ2社目となる。他商社より非資源分野が強く、安定した収益を継続的に株主還元する経営が市場に評価された。だが、その伊藤忠が対中リスクマネー(投融資と保証の合計額)をこの3年で5000億円近くも積み上げていることはあまり知られていない。

 米中対立や不動産バブル崩壊による景気失速などが懸念される中、なぜ伊藤忠の対中リスクマネーが膨らみ続けているのか。実は、その原因は、伊藤忠を時価総額10兆円企業に育て上げた岡藤正広会長CEO(最高経営責任者)が社長時代に6000億円を投資した中国中信集団(CITIC)にある。

 CITICは中国最大級の国有企業の一つで、傘下に銀行や信託、証券会社を抱えるコングロマリットだ。年間1000億円以上の利益を伊藤忠にもたらしている。優良企業に見えるCITICのどこに問題があるのか。実は世界中が懸念する中国の景気失速とは全く別の要因で、伊藤忠の対中リスクマネーが膨らんでいるのだ。

 次ページでは、伊藤忠がCITIC株を保有し続ける限り、中国に張ったリスクマネーが膨張する会計上の“からくり”と、簡単には足抜けできない裏事情を明らかにする。