戦時の商社#14写真:東洋経済/アフロ

住友商事の経営トップが6年ぶりに交代する。新社長と現社長が“同い年”であり、若返りの流れに逆行することに対して、社内外では失望が広がる一方、新体制に改革を期待する声も出ている。特集『戦時の商社』(全16回)の#14では、上野真吾新社長が改めるべき住友商事の“悪弊”を明らかにする。(ダイヤモンド編集部副編集長 千本木啓文)

同い年での経営のバトンタッチに
反発、失望があるが、一部から期待感も

 かつて三大商社は、三菱商事、三井物産、住友商事という財閥系3社だった。しかし、いまや三大商社といえば、「三菱・三井・伊藤忠」という認識が定着している。

 大手総合商社のPBR(株価純資産倍率)は1.2~1.8倍の水準にあるが、住友商事は1倍に届いていない(七大商社の中では双日も1倍未満)。

 住友商事の停滞感を打破するきっかけとして期待されていたのが、今年4月の社長交代だった。

 しかし、ふたを開けてみれば、新鮮味に欠けるトップ交代になった。次期社長に就く上野真吾副社長(64)は、兵頭誠之社長(64)と同い年で、若返りに逆行する人事だったのだ。

 住友商事関係者からは、「執行役員の手前の理事などで若返りを図っていたのにトップ人事がこれでは示しがつかない」「上野氏は下馬評になかった。社長候補として名前が挙がっていた50代幹部のモチベーション低下が心配だ」といった複数の懸念の声が上がっている。

 上野氏の資質については「同じ部門で働いていたが、個性を発揮したり、自分の意見を積極的に発信したりする人ではないという印象だ。何か改革をやってくれたら“ポジティブサプライズ”だ」(同社関係者)など、革新的というより保守的と見る関係者が多かった。

 上野新社長への期待は、低調と言わざるを得ないのだ。しかし、住友商事には、経営幹部ら自身も「改めなければいけない」という問題意識を持つ“悪弊”がある。実は、上野氏は、その長年の懸案事項を片付けるのに、“最適”といえる要素を有しているのだ。

 次ページでは上野氏がいの一番で取り組むべき、社内改革の重大な中身を明らかにする。