戦時の商社#13Photo:Kibae Park/gettyimages

伊藤忠商事は「非資源商社ナンバーワン」を標榜している。しかし純利益の内訳を解析すると、石油や石炭由来の製品に関わる部門の利益が約6割を占めていた。その比率は、化石燃料で利益を積み上げる三菱商事の約7割に迫る水準だ。特集『戦時の商社』(全16回)の#13では、「炭素商社」ともいえる伊藤忠の収益構造の実像に迫る。(ダイヤモンド編集部 猪股修平)

石炭や鉄鉱石を扱う部門の
社員1人当たりの利益は“非資源”の1000倍

 2022年度に総合商社の純利益が過去最高となった要因は、主に資源価格の高騰だった。

 事実、かねて資源ビジネスを“ドル箱”としてきた三菱商事や三井物産は、未曽有の1兆円台の純利益をたたき出している。

 一方、「非資源商社ナンバーワン」を標榜している伊藤忠商事も純利益8000億円台のステージに到達した。石井敬太社長はダイヤモンド編集部のインタビューで「知見のある領域でポートフォリオを組み、景気変動があっても、予想通りの収益を上げられる事業構成でここまで来られた」と語っている。

 岡藤正広会長も同社ウェブサイト上で非資源分野の優位性に言及し「資源価格や為替水準の平常化後を見据えた布石を着実に打っていきます」とコメントしている。

 総合商社各社は、資源価格高騰の反動で今期は減益になっているが、伊藤忠は非資源分野の“粘り腰”で、他社より減益幅が少なくなっている。資源価格に左右されない手堅いポートフォリオを築きつつあるのは確かだ。

 ところが、それは一面にすぎない。伊藤忠の社内カンパニーごとの収益力を分析すると、利益の過半をカーボンに深く関わる事業に依存している構図が見える。

 次ページでは、三菱商事と三井物産との比較から、伊藤忠の「カーボン依存商社」としての一面を明らかにしていく。