新電力絶体絶命!? 経営危険度ランキング全68社・団体#2写真提供:エナリス

ダイヤモンド編集部がまとめた新電力経営危険度ランキングでワースト1位となったKDDI系のエナリス・パワー・マーケティング(エナリスPM)。同社は5期連続の債務超過で、2023年3月期の損益は改善方向にあるが、債務超過額はさらに膨らみ129億円となった。それでも同社親会社エナリスの幹部はダイヤモンド編集部のインタビューに「一般論で言えば債務超過は経営危機とほぼ同義語ですが、当てはまらない」と強調する。特集『新電力絶体絶命!? 経営危険度ランキング全68社・団体』(全8回)の#2では、エナリスPMの財務に対する認識と、親会社エナリスを含めた今後の経営戦略を幹部に問うた。(ダイヤモンド編集部 土本匡孝)

値上げ交渉を丁寧にした結果
時間がかかって上期は赤字

――2023年3月期(純損失12億円、債務超過129億円)の理由について、「国際情勢の悪化等により調達電源が高値で推移し、値上げ提案も時間をかけ丁寧な対応を心掛けた結果、22年度上期は赤字。22年度下期は、値上げ効果が寄与したことに加え、電源調達におけるリスクマネジメントの推進により、業績は大幅に改善し黒字転換。23年度も黒字傾向を維持」とのことですが、もう少し詳しく教えてください。

 23年3月期は期初からロングポジション(ダイヤモンド編集部注:相対契約などであらかじめ電源を調達しておくこと)を取っていたので、JEPX(日本卸電力取引所)からの調達はほとんどありませんでした。(強引な値上げで批判を浴びた)他社を反面教師としたというわけではなく、お客さま対応を重視し、値上げ交渉を丁寧にした結果、時間がかかり上期は黒字になりませんでした。

 リスクマネジメントとは、20年度冬にJEPXの価格が高騰して以降、資源エネルギー庁がずっと言ってきていることです。いろいろありますが、電力先物市場の活用や独自燃調(ダイヤモンド編集部注:市場価格が大きく変動した場合に備えて新電力で独自に設定する燃料費調整額)の導入、日々のオペレーションの最適化も行っています。

 調達している相対電源の中にはオプションが付いているもの、要するに「使う」「使わない」の判断を直近でできるものがあります。ですのでJEPXの価格を見ながら社内的に最適オペレーションを行っています。弊社の特徴としてauエネルギー&ライフ(KDDI傘下の低圧向け新電力)にも電源を卸していますので、両社のオペレーションの最適化を日々行っています。

――販売量は22年3月期の41.2億キロワット時から、23年3月期は29.5億キロワット時まで減りました。値上げで客が離反したのでしょうか?

 それもありますし、リスクマネジメントの観点から事前に調達した範囲内(での販売)を心掛けた面もあります。従来はどちらかというと販売先行で、それに合わせて調達し、足りなければ市場から調達していました。今は調達ありきで、調達結果の範囲内での販売に変わってきています。弊社だけではなくて業界全体がそういう方向にあります。

――22年3月期(純損失49億円、債務超過117億円)と比べて、23年3月期の最終損益は確かに改善しました。それでも最終赤字だったのはなぜですか?