新電力絶体絶命!? 経営危険度ランキング全68社・団体#5Photo:PIXTA

近年の新電力の撤退、事業縮小、値上げなどで、2016年の電力小売り全面自由化以降、順調に伸びてきた新電力の市場シェアが反転下降した。それはかつて寡占を許されていた大手電力がシェアを取り戻しつつあることを意味し、「電力自由化に逆行している」と危機を叫ぶ声が一部で上がる。特集『新電力絶体絶命!? 経営危険度ランキング全68社・団体』(全8回)の#5では、さらに大手電力のシェアが急伸しかねない、新電力が恐れるシナリオを徹底解説する。(ダイヤモンド編集部 土本匡孝)

新電力から離れた顧客は
大手電力へ「回帰」

 新電力の自滅か、大手電力の逆襲か――。

 燃料価格高騰などの影響で多くの新電力は急速に財務が悪化し、近年、事業撤退・縮小や値上げ、強引な“客切り”などが相次いだ。

 その結果、2016年の電力小売り全面自由化以降、順調に伸びてきた新電力の販売量シェアは22年を境に反転下降した(詳細は次ページのグラフ参照)。これまでに新電力と契約していた顧客の多くは別の新電力に乗り換えたわけではなく、大手電力に回帰したのである。

 これはかつて寡占を許されていた大手電力がシェアを取り戻しつつあることを意味する。もちろん23年3月期にほとんどの大手電力の通期決算が火の車だったことを思えば、「大手電力の安定供給に対する責任感の表れ」(ある大手電力関係者)との自己評価もうなずける。

 ただ電力小売り自由化は、競争が活性化した結果、多様なサービスや料金メニューが生まれることを期待するものだったはず。そこで大手電力のシェア回復を指して競争が衰退しているとし、「電力自由化に逆行する事態となっている」と危機を叫ぶ声が一部にあるのも確かだ。

 実はさらなる大手電力の「攻勢シナリオ」が複数パターン存在し、新電力が恐れている。ただし、「誰も幸せにならないのでやめてほしい」(ある新電力幹部)との指摘も挙がるあるシナリオは、昨年末から続く“時勢”が新電力の味方となり、阻止されるかもしれない。

 新電力が恐れるシナリオとはどのようなものがあり得るのか。