新電力絶体絶命!? 経営危険度ランキング全68社・団体#1Photo:PIXTA

電力販売量上位で2023年3月期決算の新電力のうち、大手のエネルギー会社や商社、通信会社が直接、もしくは間接的に資本参画する専業系新電力23社の財務状況を比較して、ランキングにした。特集『新電力絶体絶命!? 経営危険度ランキング全68社・団体』(全8回)の#1では、新電力の主要23社の「経営危険度」ランキングを公開する。ワースト1位はKDDI系のエナリス・パワー・マーケティング。東京電力エナジーパートナー、東京ガス、出光興産などエネルギー系新電力、三菱商事や伊藤忠商事など大手商社系新電力、NTTやソフトバンクなど通信系の新電力は何位か?(ダイヤモンド編集部 土本匡孝)

大手電力会社の不祥事を横目に
「自社の経営で精いっぱい」だった新電力

「応急処置を終えて、次の戦いに向けて体力を回復させているところだ」――。

 ある新電力幹部は、業界の足元の状況をそう話す。

 燃料価格や卸電力市場価格の高騰で、2021年以降、多くの新電力の経営は傾いた。仕入れ価格を販売価格へタイムリーには反映できず、“逆ざや地獄”に陥ったことがその大きな理由だ。

 一部に事業撤退や倒産する企業も現れ、特に東北電力と東京ガスが共同出資する新電力大手だったシナジアパワーの撤退(22年3月期で債務超過51.6億円、その後自己破産)は、業界に衝撃を与えた。大手が出資していても、財務が悪化すれば容赦なく撤退する様を見せつけられたからだ。

 業界にとどまった企業も電気料金の値上げや料金メニューの改定、販売量を減らす“客切り”など、まさに応急処置に追われた。

 この間、大手電力ではカルテル問題、顧客情報漏えい問題など、競争環境を根本からねじ曲げる不祥事が発覚した。だが、「もちろん腹立たしいが、今は自社の経営のことで精いっぱい」などと漏らす新電力関係者が多かった。

 燃料価格や卸電力市場価格は23年初頭ごろからやっと落ち着きを見せる。遅れていた家庭向け電気料金の値上げも、大手電力7社が同年6月に規制料金と呼ばれる料金メニューで一斉値上げしたことで、「値上げ幅に不満」という声はあるものの、多くの新電力が歩調を合わせて値上げした。それらの結果、冒頭の発言にあるように、多くの新電力はやっと回復期に入ったようだ。ただし、財務基盤が痛んだままの新電力もある。

 では、おおむね回復期に入りかけていた23年3月期の新電力主要23社の財務を比較したランキングを見てみよう。一部を紹介すると、ワースト1位はKDDI系のエナリス・パワー・マーケティング。ただし、同社の親会社エナリスの幹部は「KDDIグループのキャッシュマネジメントに完全に組み込まれているので資金面の不安はない」と断じる。

 ほかに東京電力エナジーパートナー、東京ガス、出光興産といったエネルギー系新電力に加え、三菱商事や伊藤忠商事など大手商社系新電力、NTTやソフトバンクなど通信系の新電力は何位に入ったか?