電力販売量上位の新電力会社における2023年3月期決算の経営危険度ランキングでは、東京ガス系のTGオクトパスエナジーがワースト2位となった。同社は後発の新電力で、家庭向けなどの低圧電力で急激に販売量を伸ばしている。特集『新電力絶体絶命!? 経営危険度ランキング全68社・団体』(全8回)の#4では、23年3月期は債務超過に陥ったものの、それを物ともせずに突き進む先の「野望」について、同社社長がインタビューに応じて語った。(ダイヤモンド編集部 土本匡孝)
TGオクトパスエナジーの設立の狙いは
「東ガスの知見×英オクトパスのテクノロジー」
――東京ガスと英オクトパスエナジーが7対3で出資するTGオクトパスエナジー。2021年設立の後発ですが、目指すところは?
東京ガスは、ガス会社が強みとするお客さんとの直接の接点を生かして電力の客を獲得してきました(ダイヤモンド編集部注:主に家庭向けの低圧電力で23年3月期新電力販売量1位)。オクトパスエナジーは英国の新興テック企業で、エネルギー業界にデジタル革命を持ち込み、成功を収めたほぼ最初の企業です。
東京ガスが得意としてきた電力事業のローカルナレッジ(地域特有の知見)、英オクトパスエナジーのテクノロジーを掛け算して新しい価値を提供する。できるだけ環境に優しい電気を届けることが両社のビジョンです。
今後再生可能エネルギー由来の電力がどんどんネットワークの中に入ってくると、需給マネジメントが非常に難しくなる。全体最適を旧一の送配電会社(ダイヤモンド編集部注:東京電力パワーグリッドなど全国の大手電力系の送配電会社)が一手にコントロールするのが徐々に難しくなってきます。再エネが普及した世界では、よりエンドユーザーがサプライヤー(電力供給者)に合わせてデマンド(電力需要)をうまくマネジメントする。そういう産業構造の変化がないと、需給マネジメントができなくなるだろうと考えます。
そうすると、エンドユーザーのデマンドのマネジメントって、テクノロジーの力がすごく重要。オクトパスエナジーが持っているテクノロジーの力を最大限利用して、再エネをより使いやすくしたいと思います。
――電源調達はどのようにしていますか?
今は東京ガスがポートフォリオで調達した電源です。その中には東京ガス自身の再エネ由来の電力もありますし、FIT(再エネ由来の電力の固定価格買い取り制度)もあります。圧倒的に多いのは自社のLNG(液化天然ガス)火力発電です。
――TGオクトパスエナジーは「販売量を減らして財務改善」という多くの新電力の流れに逆行し、23年3月期に「販売量を激増して債務超過」になりました。何が起きていたのですか?