「子どもがたのしんでいるところを撮ればいいだけ。撮るときに声はかけない」「子どもがたのしんでいるところを撮ればいいだけ。撮るときに声はかけない」(写真提供/筆者)

写真を始めてみたいけれど、なにを撮ったらいいのかわからない。大人なのだから、自由に撮ればいいに決まっているが、じつは自由ほど難しいものはない。そんな悩みを抱えている初心者に、プロカメラマンの筆者がアドバイスする。※本稿は、幡野広志『うまくてダメな写真とヘタだけどいい写真』(ポプラ社)の一部を抜粋・編集したものです。

誰かと似た写真を撮るのなら
そのカメラは要らなくなる

 カメラは買ったけど「何を撮ればいいのかわからない」と悩む人がけっこういる。結論からいえば自由に好きなもの撮れよって話なんだけど、それが実はむずかしい。作文でも絵でも自由に好きにっていわれると悩んじゃうよね。

 はじめてカメラを買うときに誰かに相談をすると「何を撮りたいですか」みたいなことを聞かれる。至極まっとうな質問だけど、仕事で撮影するものが決まっていて機材を選ぶのとはわけが違う。

 はじめてカメラを買う人は写真を漠然と撮りたい。人だって風景だって撮りたいし。野良ネコだって家ネコだってアフリカでサーバルキャットだって撮りたい。カフェに行ったら冷コーだって撮りたいし、カフェに行く途中で見かけた空だって撮りたい。

 だから自由に撮れってことなんだけど、経験のない人が自由に撮れっていわれると、自由なんかまったくなくて誰かの撮っている写真をマネするのがオチだ。

 だから写真もみんな似たような写真になる。小学生が絵を描くときに友達の絵を意識して、みんなと似るのと一緒だ。本当は自由のはずなのにまったくもってみんな一緒になる。

 誰かと似たような写真を撮って安心したり、場合によっては優劣をつけて勝ったような負けたような気分になったり、突き詰めていくとそういう写真はすぐあきる。

 カメラを買ったけど使わなくなる。ホコリをかぶっていざ使おうと思ったら充電が切れて、メモリーもいっぱいの状態。全然使ってないから操作もあやふやで撮れない。

 写真を見たときにそれは全部透けて見えます。被写体のことが好きなのか、自分のことが好きなのか、自分のための写真なのか被写体のための写真なのか。写真を見た人のことをどこまで考えているかまで全部わかります。

 写真って恥ずかしいぐらい、撮影者の性格がよくわかります。