首相の岸田文雄は1月21日夜、自民党副総裁の麻生太郎と東京・虎ノ門のホテル「The Okura Tokyo」の日本料理店「山里」で会談した。岸田は向き合うとまず麻生に頭を下げた。
「事前に連絡をせずに申し訳ありませんでした。おわびを申し上げます」
岸田がわびたのは3日前の18日夜、一方的に岸田派(宏池会)の解散を表明したことについてである。麻生は岸田の宏池会解散宣言を知ると、直ちに岸田に電話をかけ、不快感を表明した。その上で自ら率いる麻生派存続の意向を伝えた。岸田も周辺にこう漏らした。
「麻生さんだけは味方に付けておかねばならない」
岸田が派閥解散に踏み切った直接のきっかけは18日付の「朝日新聞」朝刊が「岸田派を立件へ」と報じたことにあったが、派閥の政治資金パーティーを巡る不正経理事件の拡大とともに、岸田の周辺では早い段階で岸田派解散論がくすぶっていた。岸田に近い閣僚経験者は岸田に中央突破を進言した。
「腹をくくって派閥解散を打ち出すべきだ。そうでないと強い岸田は見えてこない」