「手段の時代」から「目的の時代」へ――はじまった目的工学の取り組みをさまざまな形で紹介していく。『利益や売上げばかり考える人は、なぜ失敗してしまうのかーードラッカー、松下幸之助、稲盛和夫からサンデル、ユヌスまでが説く成功法則』の第1章「利益や売上げは『ビジネスの目的』ではありません」を、順次公開している。その第2回では、普段意識して使い分けることの少ない「目的」と「目標」の違いについて考える。

実感できなかった
好景気の裏側

 みなさん、「いざなみ景気」って、覚えていますか。

 2002年2月から2008年2月までの73カ月(何と6年強!)も続いた、戦後最長の景気拡大期のことです。普通に考えれば、まだ記憶に新しいはずなのですが、「無実感景気」、あるいは「リストラ景気」「格差型景気」といった悪名が示しているように、ほとんどの人が覚えていないか、あるいはいい思い出がないようです。

 この間、業種や規模を問わず、ほとんどの企業において、「会社を守る」という大義名分の下、人件費を含め、さまざまなコスト削減が敢行され、このあまり楽しくない努力はいまなお続けられています。おかげで、きわめて低い水準とはいえ、戦後最長記録が生まれたわけですが、その結果、私たち国民の所得は減少し、さらには消費の伸び悩みという事態に発展しました。

 これは、経済学で「合成の誤謬(ごびゅう)」といわれる現象で、ミクロのレベルでは正しい行動、つまり各企業がコスト削減に励んだにもかかわらず、むしろマクロのレベル、すなわち社会全体ではモノが売れなくなるという意図に反する結果が招かれることを言います。

 実際には、もっと複雑で、専門家でも説明し切れないメカニズムが働いているのですが、少なくとも、かつての円高不況やバブル崩壊後の時と同じく、現場の人たちが少しでも売上げを増やし、1円1銭でもコストを引き下げるために懸命な努力を続けたことは間違いありません。

 その間、現場に課されたのは、さまざまな「目標」であり、「指示」や「命令」でした。売上げ××パーセント増、原価率××パーセント引き下げ、利益率××パーセント改善、ノー残業デーの徹底、交際費ゼロ等々――。かつてさんざん叩かれたノルマ営業も形を変えて復活したことでしょう。こうして、最終利益を確保し、株主への配当も増やし、(従業員給与は横ばいであるにもかかわらず)経営者報酬も上昇しました。

 企業の場合は言うまでもなく、たいていの組織では、目標と目的が混同されがちです。先ほど、「利益を追求することは、企業の目的ではない」というドラッカーの言葉を紹介しましたが、同じく、数値目標を達成することも、企業の目的ではありません(図表1-1「目的と目標は別物」を参照)。