「締切ギリギリまで考える」は愚策
これは、私のいるお笑いの世界でも同じです。駆け出しの若手の場合、完全なネタに仕上がるまで、なるべく人にネタを見せたがらない芸人がいます。自分の美学を持つこと自体はいいことですが、これではなかなか伸びません。
逆に、メキメキと実力をつけて芸人は、短い時間でネタを考えて、とにかくネタを人に見せようとします。キングオブコントのチャンピオンにもなったジャルジャルの2人はその際たる例で、理解に苦しむものも含めてとにかく膨大な量のネタを作っては、人に披露していました。
私もネタを披露された1人だったわけですが、のちに気がついたことは、彼らは、私のようにネタを見ている人を実験台にして「何が面白いのか」をひたすらたしかめていたように思います。その結果、誰よりも「お笑いの感覚」を掴むのが早く、あっという間にトップ芸人になっていきました。
今思うに、彼らは「じっくり考えること」の限界を理解していたのでしょう。そのため、短い時間で考え抜いて、やれることをやっていたのです。
この話に関連して、皆さんにも経験があるかもしれませんが、「締切ギリギリまで考える」という現象があります。そうすることで、いいものが出来上がると考えがちですが、実はそうではありません。
1週間の期限があるとしたら、「3日で仕上げて人に見せる、また3日で仕上げて人に見せる、残りの1日で調整する」が最もクオリティが上がる方法です。なぜなら、自分の思考には限界がありますが、人に見せて意見をもらうことで、自分だけでは見つけられなかった考えが一瞬で手に入るからです。加えて、まわりの人からしても進捗が把握できるので、安心です。これほど合理的なことはないでしょう。
つまり、大事なのは、自分だけで時間をかけてじっくり考えることではなく、人の力を借りながらしっかりと考えて、物事を前に進めていくことなのです。
ちょっとした意識で実践できることですので、ぜひ頭の片隅に入れておいていただけると幸いです。