いよいよ1カ月を切った。「働き方改革」を進めるべく、新たに4月から時間外労働の上限規制が適用される。規制対象となる数ある業種の中で、一事業者だけの問題ではなく、産業を問わず幅広い業界や消費者の日常生活にも大きな影響を与えかねないのが「運輸業」だ。(帝国データバンク情報統括部情報編集課長 内藤 修)
全国・全業種の約6割に
「2024年問題」でマイナスの影響
帝国データバンクが今年1月、「2024年問題」に対する見解について、全国・全業種の1万1000社超にアンケートしたところ、「マイナスの影響がある」とする企業が59.9%を占めた。さらに、物流の2024年問題に限ってみると、「マイナスの影響がある」企業は68.6%に上った。
企業からは「現状も部材不足の納期遅延が多い。物流問題が生産計画に波及し、さらに悪化するかもしれない」(電気機械メーカー)、「物流コストが増加すれば、製品単価の上昇につながり、景気は後退する」(繊維問屋)などの声が聞かれ、物流コストや人件費の増加、人手不足の悪化を懸念する企業が少なくない。
人手不足や輸送能力の低下などが懸念される、いわゆる「物流の2024年問題」の影響本格化を前に、倒産に追い込まれる中小企業が後を絶たない。昨年1年間で倒産した「道路貨物運送業者」は315件を数え、前年(238件)から3割以上増加した。なかでも、ドライバー不足や2024年問題を理由に事業継続を断念するケースが目立つ。
今年に入って相次ぐ
運送業者の経営破綻
今年1月に破産したツチヤ商運(愛知県)は、慢性的なドライバー不足が破綻の引き金となった1社。創業から50年以上にわたり、愛知、岐阜、三重の3県を主な営業エリアとして、冷凍・冷蔵品を中心に食料品や菓子配送を手がけ、2013年9月期には年収入高約5億8000万円を計上していた。
しかし、収益性に乏しく赤字決算を散発し、債務超過の状態が続いた。2019年には貨物自動車運送事業法違反で行政処分を受けるなど対外信用が悪化したほか、同業者との競争激化もあって受注が伸び悩み、2022年9月期の年収入高は約4億5000万円にとどまっていた。近時も慢性的なドライバー不足や燃料費高騰でさらに収益は悪化し、業況改善の見通しも立たなくなり、昨年6月には実質的に事業停止に追い込まれた。