管理会計で未来を
シミュレーション
――管理会計は、日々の仕事に、どのように生かせますか。
管理会計について本書では、原価計算、予算によるマネジメント(予算策定プロセス、損益分岐点分析、CVP分析、予実管理)、キャッシュフロー・マネジメント、投資評価や企業価値評価の方法、事業再生の考え方といった項目を扱いました。
顧客や市場や競争相手は、自分の思い通りにマネジメントすることなどできませんが、企業内部はマネジメントできます。会計の数字を使い、内部をマネジメントすることによって、利益は増やせる。そういった観点での企業努力が極めて重要です。
事業が会計によって数値化されることのメリットの一つに、何かを実行する前にシミュレーションできるということがあります。それにより、意思決定をサポートしてくれます。
本書で解説した損益分岐点分析をマスターし、売上高の伸びに比例して大きくなっていく「変動費」と、売上高の大きさに関係なく一定額がかかる「固定費」に、費用を分けることができれば、売上高に応じた予想利益がシミュレーションできます。
そして、利益目標を達成するために、いくらの売上高が必要かがわかるようになれば、先ほど述べたような本末転倒の仕事の仕方はなくなっていきます。数字を見て、合理的・効果的な打ち手を考えられるようになるのです。
――本書で書かれた管理会計の項目の内容を、具体的に教えてください。
まずは、原価計算です。プロのビジネスパーソンとして損益に責任を持つには、原価計算がわかっていないと話になりません。原価計算ができないと、どの商品をいくらで売れば本当の意味で利益が出るのかがわかりません。
例えば、お客さんがたくさん来店して繁盛しているけれど、利益が出ていないフランス料理店の経営再建を任されたと仮定します。どう手を打つべきでしょうか。
繁盛しているのに利益が出ていないということは、売り上げと費用の関係に何か問題があると考えられます。まずは、それぞれの料理の原価計算を正確に行い、適切な販売単価を設定する必要があるでしょう。料理で使っている食材費、個々の料理を作るコックの人数や必要時間など、費用はさまざまです。それらの正確な原価がわからなければ、適切なメニュー価格の設定はできません。