高級スモークサーモン専門に66年、ノルウェー産高級素材を独自製法で加工スモークサーモンの味付け(上)と、人手による計量作業(下)

――加工方法にも特色があるそうですね。

中村 はい。燻製の前に味付けをするのですが、素材のうま味を引き出すために、職人がサーモン一枚一枚の厚みと大きさに合わせて丁寧に塩を振る「ふり塩」製法を採っています。塩にもこだわり、ミネラルが豊富で若干甘味のある淡路島の無漂白天然塩「藻塩」を使っています。

 燻製の方法も、一般的にはサクラのチップだけを使い、30度程度で燻製をかけることが多いのですが、弊社は試行錯誤の末、国産のヤマザクラとオニグルミのブレンドチップを使用。17度の低温でじっくり8時間かけて燻しています。こうすることで、ソフトで滑らかな口当たりと芳醇な味わいが実現できるのです。

――なぜスモークサーモンを専門に取り扱うようになったのでしょうか?

中村 弊社は、1958年に私の祖父が創業したのですが、隣の米原市にマスの養殖場があり、当初はそこのマスの販売を手がけていました。その流れで、同じサケ科でロシア産の紅鮭を扱うようになったのです。他の魚も扱っていた時期もありましたが、お客さまからの評価が高く、最終的に残ったのがサーモンでした。

――当初からスーパーマーケットへの卸が主力だったのですか?

中村 いえ、バブル景気の頃までは関西圏の複数の大手百貨店にテナントとして出店し、そこでの販売がメインでした。しかし、バブル崩壊後に百貨店自体の売り上げが下がったことから、「このままだと先が見えない」と、2代目の父が思い切って百貨店から撤退し、高級スーパーマーケットへの卸にかじを切りました。

 幸い、百貨店に口座があったので、関連会社の高級スーパーで取り扱っていただくことができ、また、全国の卸売市場にも取引先がありましたので、販路を着実に広げることができました。

――方向転換が当たったわけですね。

中村 とはいえ、常に何らかの課題には直面しています。最近では、原料であるサーモントラウトの価格高騰です。コロナ禍の真っただ中は世界経済の低迷で値下がりしていたのですが、コロナが収まると、その反動でコロナ禍当時の倍近くまで跳ね上がりました。そこで最近は、比較的安価で手に入る銀鮭のスモークサーモンに力を入れ始めました。

 銀鮭は弊社だけでなく他社でもあまり使われていないのですが、一昨年から販売を開始したところ、予想以上に反響がありました。今後はサーモントラウト、紅鮭、銀鮭の三つでバランスをうまく取っていきたいと考えています。

――長浜信用金庫さんとは長く取引されているそうですね。

中村 創業初年度からお付き合いしているメインバンクです。よいときも悪いときもずっとご支援いただいてきた、と祖父や父に子どもの頃から聞かされていて、3年前のコロナ禍の最中に私が社長に就任したときも、親身になって相談に乗っていただきました。担当の営業の方が代わっても、いつも弊社に寄り添った対応をしていただき、感謝しています。

――今後の抱負をお聞かせください。

中村 多くの方に弊社のスモークサーモンを召し上がっていただきたい。そのためには再び店を出したいと考えています。スモークサーモン専門店は日本にほとんどないのでチャレンジしたいですね。手始めに、本社の敷地内に店を造ることを検討しています。信頼している長浜信金さんと相談して進めたいと考えています。

(取材・文/杉山直隆、協力/長浜信用金庫、「しんきん経営情報」2024年3月号掲載) 

事業内容:水産食料品製造業(スモークサーモン販売)
従業員数:24人
売上高:4億3731万円(2023年度)
所在地:滋賀県長浜市口分田町768
電話:0749‐62‐1974
URL:s-nakamuraya.com