ただでさえ大きな日本の国債残高はコロナ禍の4年間でさらに200兆円、率にして24%も増えた。この間の財政運営にも問題が多いとはいえ、コロナ禍が収束した現在、これを引きずることなく正常な平時の財政運営に復帰することが急務である。しかし、2024(令和6)年度当初予算にはその決意が欠けている。日本財政の現状を踏まえた上で将来を見据え、コロナ禍後の財政運営の課題を示す。
直近4年間で国債残高が200兆円も増加
コロナ禍直前の2019(令和元)年度末から直近23(令和5)年度末までの4年間で、(借換債の前倒し発行を除いた)実勢国債残高は約200兆円増えた。それ以前9年間分の増加額に半分以下の年数で達しており、結果として国債残高の対GDP比は159.2%から186.7%へと27.5%ポイントも上昇した。
本誌23年5月30日号掲載の拙稿「積み上がった国債残高『1,000兆円』の要因分析と今後の課題」(以下、前稿)で解説しているとおり、国債残高は特殊要因を除きプライマリーバランス(PB)の赤字と利払い費等の合計額だけ増加する。これに沿ってこの4年間200兆円の増加要因を分析すると、利払い費などはわずか30兆円強で、残り170兆円弱がこの間のPBの赤字の累計である(図表1)。
このPB赤字をもたらした要因の過半を占めるのが、20(令和2)年度から22(令和4)年度までの3年間の補正追加141兆円であり、その内訳は図表2のとおりである。感染拡大防止や医療体制整備などの直接的コロナ対策費はわずか1割強の14.6兆円にとどまっている。残りの経費を見れば、雇用維持・事業継続といった経済対策はまだしも、10万円一律給付というバラマキや、感染拡大防止に逆行した「Go To ××」をはじめとする飲食宿泊旅行業者支援や、デジタル化・防衛費といった便乗、使途不明な地方交付金などで、ひいき目に見ても半分は財政法の補正予算の要件に該当しない不要不急の補正追加だったといわざるを得ない。
このことは、その分だけ財政を悪化させたということだけにとどまらない。コロナ禍対策など時々の旗印があれば何でも許される風潮を常態化させ、将来にわたって安易な財政出動が繰り返される先例となることが何よりも恐ろしい。コロナ禍が収束した今こそ、こうした風潮を払拭し、財政の現状に対する危機感と改善に向けた真剣な努力を復活することが求められている。24(令和6)年度の財政運営は、平時への復帰初年度として、その第一歩を踏み出すか否かの試金石といえるはずだ。