今後注目されそうな本も…「焚書」はおすすめしない
さて、ここまでさまざまな形の「焚書せずにいられない人」の傾向を見てきたが、実はこの『トランスジェンダーになりたい少女たち』の後にも、これまた焚書のターゲットになる本が控えている。
それは今年3月19日、米国で出版された『日本のホロコースト:第二次世界大戦中の大日本帝国による大量殺戮と強姦の歴史』という、日本人には受け入れ難いタイトルの本だ。
著書はブライアン・マーク・リッグ氏。米・名門イェール大学で歴史学の学士号を取得、英国のケンブリッジ大学の大学院で修士号と博士号を取得したほか、米海兵隊で士官としての勤務した経験もある元軍人で、2020年には硫黄島についての本も上梓している。
「こんな反日トンデモ本が、日本で出版されるわけがないだろ」と鼻で笑う人もいるだろうが、過去には米国の教育現場にも大きな影響を与えたベストセラー『ザ・レイプ・オブ・南京: 第二次世界大戦の忘れられたホロコースト』が国内でも翻訳されて、発刊されたこともある。
この時も国会でも取り上げられるなどの論争となって、著者への脅迫や、中国の反日運動にも影響を及ぼす大きな騒動に発展している。
果たして今回はどうなるのか。そのあたりは著者のブライアン・マーク・リッグ氏本人に日本人で初めてインタビューをしたジャーナリストの山田敏弘氏が、本日からスタートしたニコニコチャンネルプラス「消されるチャンネル」の中で詳細を語る予定だ。筆者も聞き手として参加しているので、ご興味のある方はぜひご視聴いただきたい。
「日本のホロコースト」がこれから日本で刊行の運びになるかどうかは定かではないが、ひとつだけ断言できることがある。
それは、出版社や書店への放火を匂わすような脅迫はやめた方がいいということだ。今の時代、「焚書」になることなどなく、ネットやSNSでかえって話題を集めて、本のプロモーションになって売り上げに貢献するだけだ。
今の時代、よく価値観をアップデートすべきという話になるが、「焚書」という言論封殺に関しても、アップデートが必要なのかもしれない。
(ノンフィクションライター 窪田順生)