コロナ禍によって引き起こされた小学校受験バブルは一服したが、2024年度入試も早慶付属など人気私立小の倍率は10倍を突破。一方で「探求型」の学習をうたう私立小が人気になるなど、近年はブランドや中受偏差値にとらわれない学校選びも増えている。特集『わが子に最強の中高一貫校&塾&小学校』(全46回)の#4ではネイビーの“戦闘服”に身を包んだわが子を先頭に家族で臨む「小受」最前線を分析する。(ダイヤモンド編集部 篭島裕亮)
「小受バブル」は一服したが
応募者数はコロナ前を上回る水準
「スマホ画面の『桜マーク』を見て号泣」「親子面接では会社のプレゼンの100倍緊張した」――。
子どもの成績で合否が決まる中学受験と異なり、小学校受験は家庭全体の取り組みが評価される。それだけに小学校受験に挑む保護者の緊張感は、中学受験以上と言っても過言ではない。
教育図書21が行った首都圏の私立小学校62校への調査によると、2024年度入試の応募者は前年度比8%減となった。小学校受験バブルは一服したものの、コロナ前の20年度と比較すると応募者は9%増加しており、依然として厳しい戦いだったことがうかがえる(下図参照)。
応募者が減った理由について教育図書21の新中義一氏は「少子化に加えて、物価高やインターナショナルスクールの人気もあるのではないか」と分析する。オフィス回帰により、平日の塾通いが難しくなった共働き層が敬遠した動きもあった。
エリア別に応募者動向を見ると、東京23区で応募者を減らす学校が目立つ中、神奈川、埼玉は微減となった。埼玉県エリアの小受熱を高めたのは開智学園グループの2校だ。
「中学受験と同様に開智学園グループの他校との相乗り入試が特徴。開智小学校(総合部)は応募者を50人以上増やし、4月に開校した開智所沢小学校も初年度から人気となった」(新中氏)
一方、筑波大学附属小学校を筆頭とした国立小各校は応募者を減らした。その要因について新中氏は「国立小の特徴は抽選があることだが、コロナ禍で抽選突破が厳しくなった。せっかく準備しても受験できない可能性があることが嫌気されている」と指摘する。
中長期のトレンドでは、保護者の需要を積極的に取り入れ、それを外部に発信している学校の評価が高い。早慶付属などブランド校人気は根強いものの、時代に合った教育内容を求める家庭が増えている。
「伝統だけをアピールしても、今の保護者は魅力を感じない。体験型学習や共働き家庭への配慮など現代の保護者の需要を取り入れることが重要になる」(ジャック幼児教育研究所の大岡史直理事)
次ページでは大学付属小から、小中高一貫、中学受験に強い私立小まで首都圏主要40校の応募者数の推移を網羅したデータを大公開。具体的な学校の名前を多数挙げながら、学校選びのポイント、注目校の取り組みを解説し、25年度入試の行方を占う。専門家が注目する中堅校も紹介する。
さらに小学校受験の最難関、慶應義塾幼稚舎の「フリー枠」についても専門家に直撃。関西エリアの情報も含めて、雑誌版を大幅に拡大してお届けする。