武田薬品とアステラスで
1位が入れ替わった
23年のランキングでは、武田薬品工業は1位が京都大学と横浜市立大学、3位は筑波大学と大阪大学がそれぞれ並んだ。5位は岡山大学、九州大学、慶應義塾大学、星薬科大学で、同社は国公立大学や有名私立大学、薬科大学など幅広い範囲の学生を採用していることが分かる。
武田薬品工業、京都大学、横浜市立大学の3者は、ヒトiPS細胞由来ミニ肝臓創出手法を基盤とした創薬応用研究について、2016年11月に共同研究契約を締結するなど、産学連携を進めてきた間柄でもある。
アステラス製薬は、前年7位だった筑波大学が1位に上昇し、2位には東京大学と京都大学が並んだ。4位には東京理科大学が入り、5位は北海道大学と慶應義塾大学が並んだ。
23年11月、筑波大学はアステラス製薬との戦略的パートナーシップを結んだ。創薬研究分野のデジタル化、つくばおよび柏の葉におけるライフサイエンスエコシステム化などを進め、革新的な創薬の研究開発を加速させるのが目的だ。
武田薬品工業とアステラス製薬では、2年連続で同じだった1位が入れ替わった形だ。
一方、中外製薬は、前年と同様に1位は東京大学だった。前年8位だった九州大学が2位に、同じ順位だった大阪大学が3位に上昇した。同社は、東京大学や理化学研究所と共同で免疫疾患の機能ゲノムデータベースの構築などの取り組みを行っている。
雇用の流動化が進み
スペシャリストの需要が高まる
医薬品業界では、総合的な知識が必要とされる。理学的知識はもちろん、知的財産の保護が特許ビジネスの根幹だから知財についての知識も大事だ。
過去、経営の見通しが立ちやすい時代は、一人の社員に長期間さまざまな業務を経験させて、ゼネラリストを育てる余裕があった。
今後は、開発に力を入れるべき時期なのか、それとも有望な開発製品があって販路を開拓する時期なのかといった状況に応じて、スペシャリストを採用する需要が高まっている。
米国では特定の分野に強い人が複数の会社を渡り歩くケースも多いが、日本では安定的に雇用され、一社に長く勤める傾向にあった。しかし、最近では海外に進出する企業が増え、採用競争も激化する中、国内でも雇用の流動化が進み、優秀な若手がより自分の実力を試せる機会が増えるだろう。
*この記事は、株式会社大学通信の提供データを基に作成しています。
医科・歯科の単科大等を除く全国749大学に2023年春の就職状況を調査。567大学から得た回答を基にランキングを作成した。就職者数にグループ企業を含む場合がある。大学により、一部の学部・研究科を含まない場合がある。東京大学は「東京大学新聞」、京都大学は「京都大学新聞」より集計。大阪公立大は統合前の大阪市立大と大阪府立大の実績を掲載した。企業名は大学通信の調査方法にのっとって表記しており、正式名称と異なる場合がある。(調査/大学通信)