テクノロジーを意識的に活用し、
イノベーティブな社会へ
企業がテクノロジーについてどのような意思決定をするか、自社をいかにイノベーティブな存在に変えるかについて、考えてみよう。
イノベーションの本質とは既存の要素を組み合わせ、従来は存在しなかった、認識されていなかった価値をもたらす新たな結合を生むことにある。よって、イノベーションを生むためには、多様な要素が密に集積することにより、意識的もしくは無意識的にさまざまな組み合わせが生まれ、試され、さらにその結合度合いを高められる環境を整備しなくてはならない。
イノベーションの発生確率を上げるためには、テクノロジーを進化させる意欲とアイデアを持つ人間とそれを積極的に使ってみようという前向きな人間の両方が相互に関わりを持っていくことが不可欠で、そのためにも両者が集う実験的な場所や空間、つまり「遊び場」を多くつくり出すことが重要になる。
多くの人間やアイデアの新たな結合が生まれ、実際に試されることで、人間社会により適合したテクノロジーが生まれ、社会実装につながる確率も高まる。
新しいテクノロジーは積極的に実戦で試してみることが重要である。実戦を通じて改良を積み重ね、経済・産業活動や日常生活の現場の中でのオペレーションを確立しておく必要がある。
2011年の福島第一原子力発電所の事故において、最初期に現場に投入されたロボットは欧米製であった。日本にも潜在的に使用可能だと思われるロボットは存在していたが、現場でのオペレーション経験がほとんどなかったため、投入が遅れてしまったのである。
新しいテクノロジーも、人間との連携によって現場でオペレーションできる状態にまでなっていなければ、宝の持ち腐れとなる。もちろん倫理に反するようなテクノロジーのオペレーションはご法度だが、正しい目的に資するテクノロジーについては、その潜在力が十分に発揮されるようにするのも人間の重要な役割である。
誰かがイノベーションを起こし、テクノロジーの「確からしさ」を検証し、確固たるルールを設定するのを待って導入を決めるのではなく、最新動向を把握し、実際に社内で使ってみて、自社なりに新たな結合と実装を試行錯誤することに意味がある。
企業が、テクノロジーが人間社会にさらに浸透する将来において大きな差を生むためには、テクノロジーと積極的に共存する絵姿を構想し、それを実践する先取の姿勢が不可欠である。