表30:先進諸国の賃金(2017年、1997年を100とした値)本書より 拡大画像表示

 イギリスの187%と比較すれば、日本は半分しかない。つまりこの20年間で、日本人の生活のゆとりは、イギリス人の半分以下になったと言える。

 この20年間、先進国の中で日本の企業だけ業績が悪かったわけではない。

 むしろ、日本企業は他の先進国企業に比べて安定していた。

 経常収支は1980年代以来、黒字を続けており、東日本大震災の起きた 2011年でさえ赤字にはなっていない。企業利益は確実に上昇しており、企業の利益準備金(企業による利益を積み立てたお金)も実質的に世界一となっている。

 にもかかわらず、日本企業は従業員の待遇を悪化させてきたのだ。

 日本最大の企業であるトヨタでさえ、 2002年から 2015年までの14年間のうち、ベースアップしたのはわずか5年だけである。2004年などは過去最高収益を上げているにもかかわらず、ベースアップがなかったのだ。

バブル以降の日本企業は
「内部留保金」を激増させている

 日本の企業の業績は、バブル崩壊以降も決して悪くはなかったのだ。

 表31のように、 2002年から 2021年までの20年間で、日本企業の経常利益は倍以上になっている。

表31:日本企業全体(金融、保険以外)の経常利益の推移本書より 拡大画像表示

 トヨタをはじめ 2000年代に史上最高収益を更新し続けた企業も多々あるのだ。そして、日本企業は、企業の貯金とも言える「内部留保金」をバブル崩壊以降の30年で、激増させているのである。

書影『世界で第何位?日本の絶望ランキング集』(中央公論新社)『世界で第何位?日本の絶望ランキング集』(中央公論新社)
大村大次郎 著

 日本企業は、海外市場での存在感は低下していたが、各企業の収益力という点においては衰えていなかったのだ。

 バブル崩壊以降、国民の多くは「日本経済は低迷している」と思って、低賃金や増税に耐えてきた。しかし、その前提条件が、実は間違っていたのである。

 企業の業績は悪くなかったのに、雰囲気で人件費を削ってしまったのだ。その結果、企業は自分で自分の首を絞めることになった。

 勤労者たちは、企業にとって大事な顧客=消費者でもある。その顧客=消費者の収入が悪化するということは、自分たちの売り上げに直結することになる。

 つまりは、国内市場が小さくなることになるのだ。

【訂正】記事の初出時より以下の通り訂正します。
8段目 相対的貧困率が低い→相対的貧困率が高い
8段目 絶対的貧困率もかなり低い→絶対的貧困率もかなり高い
(2024年5月7日14:45 ダイヤモンド編集部)