減速する世界貿易
高まる自由貿易への脅威
世界経済が深刻な景気後退や失業増加を伴わないソフト・ランディングに成功する蓋然性が高まっているが、その後の成長モメンタムには勢いがつかない状況が当面続く。
ひとつの大きな理由が世界貿易の減速だ。価格を調整した実質ベースで世界の財貿易の推移をみると、コロナ禍後に大きな落込みを経験した後に急回復し、22年に4%近く拡大したが、23年は先進国を中心に3%も減少した(図表1)。
各種サーベイデータを用いた先行指標を見ても、世界貿易は24年央頃までは弱い動きが続きそうなことを示している。筆者は24年前半が前年比で1%程度、通年でも2%程度の低い伸びを予測している。
問題は、今後景気が回復していったとしても、どの程度まで世界貿易の勢いが戻ってくるか懸念が深まっていることだ。
そもそも金融危機からコロナ前の10年間、世界貿易量(実質輸入)の伸びは実質 GDP 成長率を下回る停滞状況が続き、「スロー・トレード」現象として懸念されていた。最近では自由貿易体制を脅かす貿易障壁や保護主義的な産業政策が一段と増えており、貿易面でのグローバル化の動きが頓挫するリスクが高まっている。