儲かる農業2024 JA農水省は緊急事態#15ミツバは軽いので女性や高齢者も扱いやすい Photo by Hirobumi Senbongi

ダイヤモンド編集部が選定する中小キラリ農家ベスト20で2位に輝いたのが、群馬県前橋市でミツバを生産するエスアンドエムだ。同社は、重労働をせず、余裕のあるときはしっかり休む――そんな、人に優しい働き方と高収益を両立している。特集『儲かる農業2024 JA農水省は緊急事態』(全17回)の#15では、エスアンドエムの儲かる農業の秘訣に迫る。(ダイヤモンド編集部副編集長 千本木啓文)

大病を患った広告代理店社長が
体に無理がない「儲かる農業」を実現

 中小キラリ農家2位のエスアンドエム(群馬県前橋市)のミツバ工場を訪れると、昼前にもかかわらず、社員らが出荷作業を終えて帰宅していった。

 同社は、仕事が終わったら定時(午前6時半から午後3時半)の終業時間前でも帰宅してよいことにしている。給料は定時で働いた分を払う。

 この社員らとの約束について、八須賀松夫社長は、「仕事を早く終える仕組みを社員が自ら考えて好循環をつくるためだ」と語る。

 昨年、「年間休日130日」をうたって従業員を募集したところ、2~3人の採用枠に30人もの応募者が殺到した。

 なぜ、「人に優しい」経営ができるのか。秘訣は、ずばりビジネスモデルが考え抜かれていることだ。

 八須賀氏は、会計事務所などを経て広告代理店を起業。社長としてバリバリ働いていた2017年に心筋梗塞を患った。連日連夜、接待が続く不摂生の結果だった。

 医者から勧められたのが、日の出とともに働き、日の入りとともに休む農業だった。ただ、農業参入に当たり、体に負担の少ないやり方を考える必要があった。経営者である自分が無理できない以上、従業員にも無理をさせたくないと考えた。

 次ページでは、八須賀氏に、儲かる品目や事業計画を策定するポイントを明かしてもらった。