倍々ゲームで栽培面積を急拡大させている日本一のレンコン農家がある。ダイヤモンド編集部が選出する「レジェンド農家ランキング」で19位に入ったカワカミ蓮根だ。日本一のレンコン農家になるまでの道のりが平坦だったわけではない。今でこそ急成長を遂げているカワカミ蓮根だが、手痛い失敗もしているのだ。特集『儲かる農業 下剋上 ピンチをチャンスに』の#23では、規模拡大の途上で陥った失敗からどのような教訓を得たのか。何が復活の鍵となったのか。カワカミ蓮根社長の川上大介氏に、復活ストーリーの要諦、経営ノウハウを余すところなく語ってもらった。(ダイヤモンド編集部副編集長 浅島亮子)
栽培面積100ha大台突破が目標!
レンコン農家3代目の挑戦
倍々ゲームで栽培面積を急拡大させている日本一のレンコン農家がある。ダイヤモンド編集部が選出する「レジェンド農家ランキング」で19位に入ったカワカミ蓮根(熊本県熊本市、玉名市)だ(レジェンド農家の詳細については、本特集の#6『「レジェンド農家」ランキング2023【ベスト22】上位陣のコメ生産コストは全国平均の3分の1!』参照)。
社長の川上大介氏はレンコン農家の3代目である。代々農家をなりわいにしてきたとはいっても、旧来型の農業をただ粛々と受け継いできたわけではない。
初代の祖父は、当時としては珍しく近隣農協から離脱した異端児だった。農協の販売ルートに依存することなく、栽培したレンコンについては自分で販路を開拓し、“自分で売ることが当たり前”という環境で育ったのだ。
30年ほど前の1990年代には、2代目の父は祖父の農場経営をさらに進化させた。レンコンのブランディングを高めて、高く売ることに注力した経営者で、販売先や仲卸などにとにかくよく電話していたという。
また、ハウス栽培を行なうことで通常の収穫期とずらし、「どの農家よりも早期に出荷し、レンコン1kg当たり5000円という高値で取引していた」(川上氏)。テレビ番組での料理人対決が話題で、人気沸騰中だった道場六三郎氏に1kg当たり1万4000円という、とても野菜の価格とは思えない高値で販売したいたこともあったという。
このように身内に個性的な農場経営者が存在していたことが、川上氏に買い手重視の「マーケットイン」の発想を強く植え付けたことは間違いない。
次ページでは、そうした“英才教育”で市場原理を学んだ川上氏が、祖父や父を超える日本一のレンコン農家になるまでの軌跡を追った。今でこそ急成長を遂げているカワサキ蓮根だが、規模拡大を目指す農家が陥りがちな手痛い失敗も経験している。