日本初の共通ポイント、Tポイントの「生みの親」である笠原和彦は2014年11月に楽天に移り、Tポイント打倒に乗り出す。だが、楽天ポイントの認知度は低く、新規の加盟店開拓も難航する。苦戦を強いられていた楽天が打ち出したのが、共通ポイント業界の常識を覆す独自戦略だった。長期連載『共通ポイント20年戦争』の#22では、「横綱」であるTポイントに挑んだ楽天ポイントの萌芽期の苦闘を明らかにする。(ダイヤモンド編集部副編集長 名古屋和希)
楽天ポイントが12社・団体で開始も
TポイントとPontaが加盟店数で圧倒
日本初の共通ポイントであるTポイントの「生みの親」である笠原和彦は2014年11月1日に楽天(現楽天グループ)に入社する。肩書はポイントパートナー事業長である。笠原は、自らが生み出したTポイントを倒す戦いに身を投じたのだ。
当時、共通ポイントの先駆けであるTポイントのアクティブ・ユニーク会員数はすでに5000万人を突破していた。アクティブ・ユニーク会員とは、1年以内にTポイントを利用した会員である。つまり、頻繁に使わない会員を除いた数字だ。
加えて、Tポイントの会員は「名寄せ」もしている。複数のポイントカードを持っている同じ人物は1人としてカウントする。単にポイントカードをばらまいているだけではないのだ。
それらの定義に従うと、Tポイントの会員数は、日本の総人口の4割をもカバーしている計算になる。そして、利用できる場所も桁違いで、リアルとオンラインの店舗の計23万カ所に上った。
Tポイントの加盟店から電撃離脱したローソンを中心に10年にスタートしたPonta(ポンタ)も会員数は6000万人に達していた。14年春には、Pontaを運営するロイヤリティマーケティングが、旅行予約サイト「じゃらん」などを持つリクルートホールディングスと資本・業務提携に踏み切る。この提携でPontaは10万近い店舗で利用できるようになった。
一方、14年10月に共通ポイント市場に参入した楽天は両者に大きく後れを取っていた。大丸や松坂屋を傘下に持つJ.フロント リテイリング、出光興産、サークルKサンクスなど12社・団体でスタートしたものの、使える場所は、サークルKサンクスの6300店や出光興産のガソリンスタンド3100カ所を合わせた約1万2000カ所にとどまっていた。
何より、最大の問題は認知度であった。