類似のOTC薬がある処方薬
保険外しで全額自己負担も?

 というのも、今回の制度は厚労省、さらには政府の財布を握る財務省にとって複数ある負担増の腹案の一つにすぎないからだ。

 それは厚労省が昨年9月に初めて今回のブランド薬の案を出した際の資料に表れている。実は、今回の負担増は「4案」の中から選ばれた経緯があるのだ。

 ハードルが低い順に並べれば、次に来るのは「市販品類似の医薬品の保険給付の在り方の見直し」となる。市販品とは、ドラッグストや調剤薬局に並んでいる「第〇類」などと書かれた医薬品を指す。医師の処方なしにカウンター越しに買える「オーバー・ザ・カウンター・ドラッグ(OTC薬)」とも呼ばれるもので、抗アレルギー薬、湿布、痛み止め、風邪薬など、多様な医薬品が販売されている。

 財務省は約30年前から、ドラッグストアで買えるこういった薬を、クリニックや病院の処方を通じて保険の中でも得られることを問題視。外用剤や漢方製剤などを中心に「保険の対象から外すべきだ」と訴え続けてきた。

 仮にOTC類似薬の全てを保険から外して「ドラッグストアで買え」というのも極論と捉えられ、これまで実現はしてこなかった。OTC薬を購入できるドラッグストアなどの分布に地域差がある背景もある。薬が手に入らなくなってしまえば、本末転倒である。

 ただ、今回ブランド薬に用いられた選定療養の仕組みであれば、今後の保険範囲の縮小は容易にもなる。もしOTC類似薬が選定療養の対象となり、全額自己負担で「医療用も薬局で買える」ようになれば、供給面の課題は生じにくい。

 もちろん例えば花粉症薬における「国がスギを植え続けたせいで生じた国民病なのに全額自己負担はひど過ぎる」といった反感なども予想されるが、厚労省や財務省はこうした検討を進める姿勢を見せ始めており、もはや非現実的な案とはいえないだろう。

 これだけでなく、医薬品の有効性などの医療上の利益に応じて自己負担割合を変化させる案や、医薬品の支給時に定額負担を上乗せする案も俎上に載っていた。医薬品の保険範囲の縮小に向けた機運が高まっていることは間違いない。

Key Visual by Noriyo Shinoda, Graphic by Kaoru Kurata