「ヒルドイド」負担額1.5倍に
1カ月1665円→2439円
あくまで追加負担は「患者が希望した場合」に限られ、医師が必要と判断したケースや、近年の深刻な医薬品不足の影響でブランド薬を使わざるを得ないケースは対象外だ。口から飲むだけの経口剤や、患者自身の使用感が薄い注射剤で「ジェネリックは嫌だ」という声は限定的だろう。ただ「使い心地」が影響する塗り薬や貼り薬などの外用剤、デバイスが絡む吸入薬、抗てんかん薬や抗精神病薬などでは、依然としてジェネリックへの警戒心が根強い側面もある。
それでは10月以降、こうしたブランド薬を希望した場合にどれだけの負担増となるのだろうか。消費税なども絡み複雑なため、細かい計算式は割愛するが、例えば「ヒルドイドソフト軟膏0.3%」を希望し、300グラム処方されたとしよう。これまでは3割負担で1665円の自己負担だったが、10月以降は774円増の2439円となり、負担額は約1.5倍に広がる。ぜんそく薬「シムビコートタービュヘイラー60吸入」は858円から、約1.3倍となる1110円に増える(下表参照)。
特に外用剤などはジェネリックの使用割合が低い傾向にあったが、これだけの負担増になれば「ブランド薬を使おう」というモチベーションが下がることが想定される。そのため、今回の追加負担制度の導入を巡り昨年来、外用剤を中心とする製薬企業などは水面下の反対運動を展開。昨年末に新制度が決定した後も、4月19日に対象品目リストが公表されるまで、国会議員を巻き込んで、関係各社が抵抗運動を進めていた。
「ジェネリックとは使用感が全然違う別物なのに、ブランド品に追加負担を求めるのはおかしい」
そんな声も聞かれ始めてはいたが、結局は、厚労省が「医師が必要と思えばブランド薬を追加負担なしで出せる」という点で押し切り、1095品目が対象となった。
さて、ブランド薬にこだわる患者にとって大幅な負担増もあり得る新制度となる。さらに今後、追加負担の規模を、ジェネリックとの差額の3分の1、2分の1と徐々に増やしていく可能性もある。
一方、今回の制度は「アリの一穴にすぎない」とみる向きもある。