とはいえ、住宅購入は富裕層だけのものになったわけではない

 ただ、住宅購入の難易度が上がっているからといって、お金を持っている富裕層だけの選択肢になっているかというと、そんなことは決してありません。

 むしろ、こういったなかで感じることは、いい家を買えるかどうかは資金の差ではなく考え方の差によるところが大きいということです。言い換えれば、多くの人が、住宅・不動産リテラシーが未熟であると私は感じています。ここでいうリテラシーとは、「情報を適切に理解、解釈して活用すること」を指します。

 これは、知識がないというよりは、住宅購入に対する考え方やスタンスの部分が未熟な人が多く、またそういったことを学ぶ機会がほとんどないことも意味します。書店に行けば、住宅購入の本はたくさん置いてあるのに、住宅購入に悩んでいる人や一歩目を踏み出せない人は増える一方です。

 住宅購入に正解はありません。同じ5000万円の物件を買うとしてもライフスタイルや年収の違いによって、それが正解になる人もいれば失敗になる人もいます。大事なことは、世の中の価値観に振り回されず、自分に合った家を選ぶことです。

 たまに、タワマンを買ったからといって人生の勝ち組なったと考えている人がいますが、残念ですが、そんなことはありません。タワマンも素敵な買い物ですが、それは人生における幸せの一要素です。もし、タワマンを買うことが目的になっていたとしたら、それは幸せと言えるのでしょうか。

 「家とは自分が幸せになるためのツールである」と私は考えています。決してゴールではありません。ですから、「賃貸VS購入」、「マンションVS戸建て」、「新築VS中古」、「変動金利VS固定金利」など、世間的な対立軸に惑わされず、自分に合った選択をしてほしいと思います。