ならば変化したのは、民法によって家父長制が定められた明治時代以降ということか。しかし、そこからたどるとなると途方もないので、逆に「男は辛党、女は甘党」という縛りが薄らいだ現代からさかのぼって、転換点を探ってみたい。

「スイーツ男子はそこかしこに!」
オフィスグリコは気づいていた

 スイーツ男子というネーミングが登場した端緒は、コラムニストの深澤真紀が2006年(平成18)に、恋愛に積極的でない男性を指して名づけた「草食男子」だ。そこから従来の“男らしさ”とは異なる行動を取る男性を「○○男子」と呼ぶのが流行り、会社に自作の弁当を持参する「弁当男子」や、手芸など乙女チックな趣味を好む「乙女男子」といった言葉も編み出された。

 ただ、スイーツ男子という言葉が広まる10年ほど前から、甘党の男性がじつはけっこう存在することに世の中は気づき始めていた。

 その一例が、1999年(平成11)に江崎グリコが大阪で試験的に発売を開始した「オフィスグリコ」の購買結果だ。

 オフィスグリコは、会社の置き菓子販売サービスである。開始にあたって「利用者は女性を想定したが、実際は7割が男性だった」。オフィス人口は総数からいえば男性のほうが多いだろうから、単純に考えれば男性の利用者数のほうが多くなることが予想できそうなものである。

 だが、それほど「男性はお菓子を食べない」と考えられていたということだろう。好評を博したオフィスグリコはその後、2002年(平成14)に首都圏へ展開し、現在では愛知や福岡などでもサービスが提供されている。

 隠れた需要に気づいたコンビニも、男性向けスイーツを相次いで発売する。2006年(平成18)にローソンが20~30代男性をターゲットにした大きめの「Men’sパフェ」をリリース。翌年、ファミリーマートも大容量の「男のティラミス」「男のカフェラテ」「男の珈琲ゼリー」を投入した。そんな流れに乗って「スイーツ男子」は広まったのだ。

 では、甘党の男性が顕在化されていった時期は、どんな時代だったのだろうか。