これはトヨタの電動化戦略の投資額を上回るものだ。加えて、三部社長は、30年に先進国で40%、40年までにホンダの全ての新車をEV・FCEVとする従来の目標を維持することも明言したのだ。

 いわば、ホンダはEVシフトが減速し、各社で戦略を見直す機運が高まる中でも、「逆張り」の強気な投資計画を打ち出したのだ。

 この背景には、21年4月の社長就任から4年目を迎えた三部社長の下、ホンダが四輪事業で稼ぐ力をつけ、財務基盤が安定してきたことがある。また、電動化・知能化における新たなモビリティでの世界的な競合に打ち勝つために、日産自動車と提携の検討を電撃的に表明するなど、旧来のホンダトップの方針からの決別を断行し、独自色を強めている背景もある。

 また、あえて言えば、マルチパスウェイを掲げるトヨタの投資余力と、トヨタを超える巨額投資とはいえ、EV投資に集中せざるを得ないホンダの投資余力の違いもあるだろう。

 とはいえ、「2030年といってもあと5年しかないので」と三部社長は発言しており、巨額投資の決意を物語る。また、三部社長は「世界的にEVの踊り場とか減速感が言われているが、EV黎明(れいめい)期にはこれも織り込み済み。20年代後半にはEV普及期が訪れる。小型モビリティには、EVが最も有効なソリューションだ」と言い切った。ホンダは30年にEV世界生産販売200万台を目標に、バッテリーを中心としたEVの包括的なバリューチェーン・調達網の構築と、コスト20%削減を目指す。