この10年で税金と社会保険料がじわじわアップ、
知らない間に手取り額は減っていた!
第二に、たとえ額面給与が上がっても、税金や社会保険料の負担がアップして手取り額が年々減っていることに目を向けなくてはなりません。
たとえば額面年収600万円で専業主婦の妻と16歳以下の子どもが2人いる人の場合、税金や社会保険料を差し引いた手取り年収は、2002年には516万円でした。ところが、2012年には同条件の手取り額が470万円にまでダウンしているのです。
10年間給与が変わらなかったと仮定すれば、約46万円も使えるお金が少なくなってしまった計算になります。
手取り年収の減少率は額面年収や家族構成によって異なりますが、様々な条件で試算してみると、2003年以降の10年間で約6〜9%ダウンしていることがわかるのです。
この10年に負担増となる制度改正は
こんなにあった!
手取り収入を圧迫する制度改正は、継続して実施されています。その怖さを実感していただくために、過去10年間の主な制度改正を振り返ってみましょう。
◎2003年
◆社会保険料に「総報酬制」が導入され、厚生年金、健康保険、介護保険についてボーナスの保険料負担がアップ。ボーナスの割合が多い人ほど、手取り年収が減ることになりました。
◎2004年
◆所得税の配偶者特別控除が一部廃止、専業主婦または年収103万円以下の妻がいる世帯の税負担が増しました。
◆厚生年金保険料はこの年から毎年0.354%ずつ、2017年まで継続して引き上げが実施されています(現在も継続中)。10年以上にわたる保険料率の引き上げは手取り収入への影響が小さくありません。
◆介護保険料も本人負担分が0.11%引き上げられました。
◎2005年
◆住民税の配偶者特別控除が一部廃止。
◎2006年、2007年
◆所得税と住民税の定率減税が縮小・廃止され、実質的な増税が行われました。
◎2010年
健康保険の保険料が上がりました。協会けんぽの全国平均の料率は、8.2%から9.34%にアップ。労使折半だと本人負担分は約0.5%のアップですが、年間で見れば数万円も負担が増えることになりました。
◎2011年、2012年
◆所得税と住民税の15歳以下の年少扶養控除が廃止になり、16〜18歳の特定扶養控除は縮小されました。中学生以下の子どもがいる場合、所得税や住民税が増え、手取り額が大幅にダウンしています。
◎2013年
◆「復興特別所得税(復興増税)」がスタートしました。今後、25年もの長期間にわたり、所得税が2.1%上乗せされるのです。
どうでしょうか。こんなに毎年、税金がアップしているのです。そして恐ろしいことに、こうした制度改正は、どれも消費税増税ほどには大きなニュースになりませんでした。
もちろん、改正が決まるまでのプロセスはさかんに報道されましたが、実施段階ではニュースの扱いはあまり大きくありません。それに、ひとつひとつの制度改正のニュースをしっかりチェックしている人であっても、長期的な視点で「結局、自分の生活にどれくらい影響があるか」を把握するのは難しいでしょう。