メタ認知の心の習慣を
身に付けさせる

榎本博明『「指示通り」ができない人たち』(日経プレミアシリーズ)榎本博明『「指示通り」ができない人たち』(日経プレミアシリーズ)

 同じミスを繰り返したり、伸び悩んだりしている人物に対しては、メタ認知を促す教育的働きかけが必要である。

 そのような人物に関しては、個別面接の場を設けて、日頃の仕事ぶりを振り返って、気が付いたことを言ってもらうのもよいだろう。

 たとえば、自分の仕事のやり方に関して、どんな点はうまくできていると思うか、人から評価してもらえたことは何かあるか、どんな点はまだうまくできていないと思うか、人から注意されたことは何かあるか、自分にはどんな長所があると思うか、自分にはどんな短所があると思うか、というような質問をして、それぞれについてじっくり振り返って考えてもらう。それによって何らかの気付きが得られるはずだ。

 まだうまくできていない点についての気付きが得られたら、どのようなことに注意すべきか、どんなスキルを身に付ける必要があるか、どんな能力を開発していく必要があるかを考えてもらう。

 自分の長所に関する気付きが得られたら、その強みを活かすにはどんな仕事の仕方を心がけたらよいかを考えてもらう。自分の短所に関する気付きが得られたら、そこをカバーするにはどんなことを心がけるべきかを考えてもらう。

 このような面接を1回行ったところで、急に改善されるわけではない。自分の仕事ぶりを振り返る心の習慣を身に付けてもらうには、このような面接を定期的に行っていく必要がある。月に1回でも、季節に1回でも、そうした場を経験することにより、自分を振り返るようになり、仕事の場でも自然にメタ認知が働くようになるはずである。