Photo:DALL-E写真はイメージです Photo:DALL-E

会社や組織で一緒に働く以上、若手や途中入社の人には適宜フィートバックや指導をし、早く仕事ができるようになってくれないと困るものだ。しかし最近の若者は、親や教師から厳しく怒られることがほとんどなく、ほめられて育ち大人になった人が多い。仕事ができないからといって、自分が若かったころのようにキツく言うのもはばかられる……という悩みを抱える管理職は多い。仕事ができない部下に手を焼く上司は、こうした人たちに対し、どのように接したらいいのだろうか。(心理学博士 MP人間科学研究所代表 榎本博明)

※本記事は『「指示通り」ができない人たち』(日経プレミアシリーズ)から抜粋・再編集したものです。

謙虚な若者?いえいえ……

 仕事ができずに周囲に迷惑をかけているのに、本人は仕事ができるつもりでいるというのも困った話だが(参考記事)、自分は仕事ができないと嘆くばかりなのも困りものである。自分は仕事がちゃんとできていないことに気づいているだけマシではあるが、嘆くだけではいつまでたっても仕事ができるようにはならない。

 そのような部下の扱いに手を焼く管理職は、次のような思いを口にする。

「始めのうちはとても謙虚な人物だと思い、好印象だったんです。仕事に慣れないうちはミスは付きものなので、その都度ミスを指摘し、注意をすると、『すみません。要領が悪くて、皆さんの足を引っ張るばかりで……』『思うように仕事ができず、申し訳ありません』と恐縮した感じで反省を口にするので、今どき珍しく謙虚な若者だと思っていました。でも、いつまでたってもそのままなんですよ」

『そのまま、というのは?』

「いつまでたっても、一人前にできるようにならないんです。もう半年以上になるんですよ」

『通常は半年くらいで一人前にできるようになるんですか?』

「あっ、一人前というのはちょっと言いすぎでした。初歩的なミスをせずに、とりあえず人に聞かなくても自分でやれるようになる、ということです。普通は1カ月もすれば、その程度にはできるようになるんです。それが半年たっても変わらず初歩的なミスをするんです。そして先輩に指摘されると、『すみません。仕事が全然できなくて皆さんの足を引っ張るばかりで……』と、自分の至らなさを素直に認め、反省をするんですけど、なかなか改善されないんです」

『自分がうまく仕事ができていないことは素直に認めるし、反省を口にするけれども、まったく改善されない、ということですか』