長年の研究を基に、「日本経済の『失われた30年』という通説は間違っている」と論じ、日本の未来に希望を見る、話題の書『シン・日本の経営』(副題は「悲観バイアスを排す」、日本経済新聞出版社、2024年)。その著者、カリフォルニア大学サンディエゴ校グローバル政策・戦略大学院のウリケ・シェーデ教授にインタビューした。全5回の連載でお届けする。連載3回目は、リーディング企業に共通する特徴を抽出する。(聞き手・文/ダイヤモンド社 論説委員 大坪 亮)

日本経済の再浮上をリードした大企業の特徴ウリケ・シェーデ(Ulrike Schaede)
米カリフォルニア大学サンディエゴ校グローバル政策・戦略大学院教授。
日本を対象とした企業戦略、組織論、金融市場、企業再編、起業論などが研究領域。一橋大学経済研究所、日本銀行などで研究員・客員教授を歴任。9 年以上の日本在住経験を持つ。著書にThe Business Reinvention of Japan(第37 回大平正芳記念賞受賞、日本語版:『再興 THE KAISHA』2022年、日本経済新聞出版)など。ドイツ出身。
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キーエンス、ファナック……
高い利益率を続けていた企業

――高い利益率を続けてきた日本企業はどこか。本書の後半で分析されています。

「日本経済の再浮上の先頭ランナー企業はどこか」ということになるのですが、その調査・研究は2010年に遡ります。

 バブルが崩壊して、1990年代〜2000年代の日本は苦境にありました。全体として、日本企業の利益率はとても低かった。しかし、その中でも、儲かっていた企業はあった。それは、どういう企業なのだろうか。私は興味深く思い、調査しました。

 2000年度〜2009年度の日本の全上場企業の営業利益率ランキングを作りました。 そのランキングの中の製造業(製薬を除く)での上位1位〜10位が図4です。本書では11位〜40位の日本企業も示していますので、関心があればご確認ください。

 図4は、10年間の平均営業利益率(%)と標準偏差です。標準偏差は低いと、安定的に利益率が高いという意味ですね。1位のキーエンス、2位のファナックは、日本の皆さんも予想通りということかもしれません。

 ただ、3位以下は、どうでしょうか。ヒロセ電機、ユニオンツール、コーセルなどは知る人ぞ知るという企業ではないでしょうか。本書で40位まで見て頂いても、有名企業やそうでもない企業がいろいろとランキングしています。 

 次に、「なぜこれらの企業の利益率は高いのか」「これらの企業の共通点は何か」について探りました。しかし、企業規模、創業期、株主構成など、いろいろ考えても、共通項目はありませんでした。

 そこで私は、各社の社長や経営陣にインタビューしました。それによって、企業の特徴として見出した共通点をまとめたのが、7つのPです。